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運送業の2024年問題 仕事を断る苦渋の決断をする事業者も 荷主と直接交渉で利益確保へ 

2024年問題とは...大きな変化が目前に迫る陸上の輸送「2024年問題」、私たちの生活に関わってくる。「問題」と呼ばれているが、第一に行われるのは「ドライバーの働き方の改善」だ。

厚生労働省によると、トラックドライバーの年間労働時間は全ての産業と比べて「約2割長い」一方で年間所得額は「約1割低い」状況。こうしたことも影響してか、有効求人倍率は「約2倍」と人手が不足している。
そこで、2024年4月からトラックドライバーの負担を軽減するために、これまで制限がなかった「時間外労働」いわゆる「残業」に「1年間で960時間」という上限が設けられる。
ドライバーの労働時間が制限されると、運べる荷物が減り、かかる時間がのびるため、「安定的に物を運べなくなる」恐れがある、これが2024年問題だ。
宅配便大手のヤマト運輸は約2%、佐川急便は約7%運送料を値上げするほか、日本郵便は、速達などの配達日数を見直したり、料金も値上げする。
福島県内の運送会社は、この2024年問題を見据えて、工夫や荷主との交渉を進めてきた。

<事業者の苦渋の決断>
従業員約120人、98台のトラックを運行している福島市のトランスパック。
トランスパックの赤間健男社長は「やっぱり今のままだと運送業やっていけなくなるのかなと、そういったことは考えましたけど」と話す。

4月の労働基準法の改正でトラックドライバーの時間外労働、いわゆる残業は一年間で960時間までに制限される。以前は、1カ月の残業が平均で1200時間ほどに上っていたが、今回の改正を見据えて請け負う仕事を見定めたり、各ドライバーの仕事を調整したりして、残業時間を縮めてきた。
ただ、長距離の輸送では宿泊が必要になって、これまでより時間がかかるケースもあるため、請け負える仕事は減っている。「うちとすれば荷主さんに理解を頂いて、労働時間も守らないとならないので、それに対しての理解してもらうための資料をこちらで出して、翌日着だったものが翌々日になりますよと」赤間社長は話す。

トランスパックでは、輸送件数が減っても利益を確保するため、荷主と直接交渉して値上げに繋げている。しかし、荷主と直接交渉できる運送会社は一部に限られ、多くの会社は値上げできていないという。また、改正に向けた環境づくりも必要だと訴える。
赤間社長は「例えば長距離ドライバーの休憩施設、これが今整ってない。これがちょっときついですよね。整い次第スタートしますよっていうのであれば、良かったなって思っているんですけど」という。
トランスパックでは、残業手当が減った分の補填や人材確保につなげるため5%の賃上げを目指していて、運送業界全体で前向きに仕事が出来る環境が整うことを期待している。

<2024年問題は他にも>
受け取る私たちも再配達を減らすなどドライバーの負担にならないよう気をつけたい。2024年問題は、物流だけではない。
建設業もこれまで残業の上限がなかったが、年間720時間までに制限される。
ただし、災害が発生して復旧、復興事業を行う場合、残業や休日労働などの規制は適用されない。
さらに、医師の場合は、年間の時間外労働の上限が960時間。
地域医療を維持するためにやむを得ない場合は最大1860時間まで拡大出来るが、医療機関が都道府県に申請し、指定を受ける必要がある。

<問題なのはこれまでの状態>
残業の規制は働く人を守るために必要なこと。残業を規制したら問題が発生するというのは、これまでトラックのドライバーや医師などがリスクを背負うことを前提に一定水準のサービスや医療が維持されてきたとも言える。
働く人を守りつつ経済活動や医療を維持していくためには、理解や新たな費用の負担なども必要だ。