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温泉街の和菓子店にクマ 一晩居座り...捕獲か、山に逃がすか 警戒続く<福島・会津若松市>

通報から丸一日が経った現在も現場では警戒が続いてる。3月27日福島県会津若松市の東山温泉にある和菓子店に入り込んだクマ。捕獲か、追い払いか、温泉街は緊迫した空気に包まれている。

28日午前5時半、夜が明けてもにらみ合いは続いていた。
「店内にクマが入ってきた」通報があったのは27日午後4時すぎ。現場は会津若松市の奥座敷、東山温泉にある和菓子店だった。クマが進入した店は、東山温泉街の目抜き通りに面し、周辺は温泉旅館が立ち並ぶ場所。近くを流れる川沿いなどでは、これまでもクマの目撃があった。
クマは和菓子店の地下に入り込んだとみられ、警察と市は警戒を続けながら、住民と旅館の宿泊客の安全の確保にあたった。近くの人は「こわいよね。うちのところにも開けて入ってきたらどうしようなんてね」と話す。

会津若松市はドローンでクマが潜む状況を確認。要請を受けた捕獲隊も川沿いなどにワナを設置する。
千葉から訪れた女性は「水ようかんが有名なので買おうかなと思ってきたんですけど、怖いですよね」と話す。
警戒が続く中、カメラは窓越しに映るクマらしき影を捉えた。
会津若松市有害鳥獣捕獲隊は「出た様子はない、まちがいなく中にはいる。観光客にも旅館にも影響する。危険だとなればファイバースコープを入れて中の確認をして個体がいれば麻酔銃」と話す。
クマへの対応として挙げられた二つの選択。
一つは、麻酔銃を使用した捕獲。
もう一つは、煙でクマを店から追い出し、山に逃がす。

午後4時前、ゴキブリ駆除用の殺虫剤で煙をたき、クマが出てくるのを待つ。
しかし、建物の中から鳴き声や物音は確認されなかった。
捕獲隊は「きょうこれから対応する手段はもうないので、一応解散してまた明日になるような形(だと思う)。夜になって動く可能性は十二分にあると思うよね。安心はできる状態ではありません」と話した。

一晩経ったクマの居座り。28日も東山温泉には多くの人が宿泊しているという。警察が店舗前と温泉街をパトロールし、警戒を続けているが、外に出る際などは十分に気を付けて欲しい。

<なぜ夜の捕獲見送った?>
クマの捕獲に向けた動きは29日も継続されることになった。
会津若松市や猟友会への取材で、捕獲には温泉街ならではの難しさがあるという。

まず発見した27日の夜のうちに捕獲できなかったのか?
猟友会のメンバーによると、クマは夜行性の為、襲われる危険性が高く、夜が明けるのを待ったという。
そして、捕獲が早朝ではなく午後になった点については、宿泊客の安全を確保する為にチェックアウトの時間が過ぎた午前11時から捕獲に向けた行動を開始したという。
人的な被害が及ばないようリスクを排除し、慎重な対応を取ったということだ。

2024年に入りクマの目撃件数は24件と例年に比べて多くなっていて、専門家は今年ならではの状況を指摘する。
福島県野生鳥獣保護管理検討委員会の田口洋美座長は「暖かくなって雪が降らなくなって、極端なこというと、今度冬眠もしなくなるというかね」という。クマの生息状況や行動などに詳しい田口さんが指摘するのが"温暖化"。
田口さんの調査では、今年は例年とは異なり、冬の間も活動するクマの目撃や形跡などが多く確認されたという。田口さんは「要するに奥の山に戻ってないんだよね。(人が暮らすところに)降りてきて、そこにいちゃっているんだよね、そういうことを考えると、これから去年の秋の続きが始まるというか」と話す。

田口さんによると、4月の中旬には冬眠明けのクマがエサを求め人里まで下りてくるリスクが高まるという。クマを近づけないようにするため、収穫した野菜や果物を家の周りに置かない、生ごみの管理を徹底することが大切だ。
また、山に入る場合は、あらかじめ行き先の周辺でクマが出没していないかを確認し、山に入る際は鈴などで自分の存在を伝え、複数で行動することを心がけてほしい。