【サブクレードKとは?】インフル過去10年で最多...専門家に聞く"新たな変異株"<福島>
福島県内のインフルエンザの感染報告数は11月17日から23日までの1週間で1医療機関あたり86.71人と8週連続で増加し、過去10年で最多となった。また、198の学校施設で休校や学級閉鎖等の措置が取られるなど、感染の急速な拡大が顕著になっている。
流行の中心には変異株「サブクレードK」の存在が指摘されている。
感染症を専門とする、福島県立医科大学の山藤栄一郎 主任教授(医学部 感染制御学講座)にこの変異株について話を聞いた。
Q "サブクレードK"とはいったい何?
A ざっくりと言えば新しい変異株みたいなものです。インフルエンザと言えばA型やB型というのをよく聞くと思いますが、A型の中にもH1N1とかH3N2とかに枝分かれをしていて、枝分かれの先に「クレード」や「サブクレード」があります。
「サブクレードK」は、大きく言えばH3N2、いわゆる香港型のくくりなのですが、枝分かれした先で変わっているよということ。枝分かれした1つが出てきたという感じですので、「劇的に新しいのが出てきたぞ」というのは言い過ぎで「ウイルスの形が何か所か変わったものが出た」というイメージですね。
Q どうしてこれほど急拡大しているの?
A もちろん今の季節は乾燥している、気温が低いという点でウイルスにとって広がりやすい環境にはなっています。
さらに変異が起きたことで、ワクチンへの影響もあります。ワクチンをつくるときには「今年のワクチンはこのタイプのインフルエンザに効くぞ」というのを予測してつくるわけですが、変異することで予想していたワクチンの形とちょっとずれてしまいます。防衛体制を構えていたけれど、形が変わってしまったことでワクチンが少しすり抜けやすくなってしまったというイメージです。
免疫が通用しにくくなったことで、感染しやすい人が多くなり、立ち上がりが早くなった可能性がありますが、極端に増えた要因は、感染対策ですとか人の動きですとか色々な要素が加わっていると思われます。流行が早かったので、ワクチンを打つ前に感染した人も多かったのではないかと思います。
Q 福島県内の流行もこの"サブクレードK"によるもの?
A 他の地域の流行状況を見ても、おそらく県内の流行の主流はこのサブクレードKなのではないかなと考えられます。感染数が突出しているエリアについては、詳細な背景は特定できませんが、イベントがあったですとか、人が交流する機会があったかもしれないですね。ただ、全県的に(感染報告数が)増えているので、エリアごとの極端な違いはないと思います。
Q これまでのインフルエンザと症状は違うの?
A 先ほど感染しやすくなったと話しましたが、病原性がすごく強くなったとか、そういうものではありません。これまでのインフルエンザから極端に症状が変わったというものでもありません。
ワクチンが効きにくいと言ったのも「感染のしやすさ」という点であって、入院したり重症化したりするリスクを軽減する効果は残っていますので、ワクチン自体に意味がないということではありません。
Q これからの懸念は?
A いまのところの流行としては、だいたい5歳から14歳くらいまでの小児が中心になっています。これはインフルエンザにかかったことがないため免疫がないのと、集団生活をしているということから流行が拡大しやすいというのが背景にあります。小児科の外来などに負担は出てきていると思いますが、この後だんだん、高齢者や基礎疾患のある人にまで波及してくると、小児科だけではなくて、発熱に対応している医療機関にも影響が出てくるかもしれません。
「入院したら実はインフルエンザでした」というケースは当院でも出てきていますし、入院患者さんがインフルエンザに感染したとか、そういう人は出てきています。感染対策を追加しないといけませんし、職員にも日常生活で感染する人も出てきますので、病院の中でも外でも感染が起きる状況に警戒しなくてはならない状態が続くと思われます。
Q 対策は?
A まずワクチンを接種していない人は接種した方がいいと思います。一度かかったから接種しなくていいかというとそうではなくて、いま流行しているものとは別の、たとえばB型が流行するかもしれませんので。ワクチンは何種類かのタイプに効果があるので、もし感染したとしても軽く済むかもしれない。
また、変異によって「感染しやすい」状態になっていますので、感染対策をワクチンと組み合わせて行うことも重要です。マスクを着用したり換気をしたり手洗いをしたりということですね。換気は全開にする必要はなく、寒暖差が大きいと空気もぐっと入ってきますので、ちょっと開けていただいて。マスクも小さい子どもに強制するとか、暑い季節も含めて1年中ということではないので、流行しているときには意識していただいて。こういった対策を組み合わせることで病気にならずに元気に過ごしていただきたいですね。













