デブリ採取延期・本格取出し設計公表・燃料取出し準備...東電「非常に大きな変化あった年」<福島第一原発>
福島第一原子力発電所の廃炉をめぐり、廃炉の責任者である東京電力の小野明副社長(福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント兼 廃炉・汚染水対策最高責任者)は、12月25日に会見を開き「私としては非常に大きな変化があった年だった」と2025年を総括した。
燃料デブリの2回目の採取、使用済み燃料プールからの燃料取出しの準備進行などに触れ「作業が大きなトラブルなく行えたのは非常に大きいことだと思っている」とした。
2025年4月には2号機で事故後2回目となる燃料デブリの試験的取出しを実施し、約0.2gの採取に成功した。2024年11月に採取された約0.7gのデブリと同様、核燃料の主成分であるウランが表面に広く分布していることや、人力で砕くことができることなどが分かっている。また、2回目の採取は1回目よりも1mほど格納容器の中心に近いところで実施され、核燃料由来の成分が1回目よりも多い割合で含まれている可能性が指摘されている。
1回目、2回目の採取とも、格納容器につながる配管の中に、事故の熱で溶けたケーブルなどが固まって詰まっていたため、2回の採取とも、比較的狭い場所を通ることができる"釣り竿型"のロボットを使用。
3回目の採取は、78億円をかけて製作した大型の"ロボットアーム"を使用する計画でいたが、一部のケーブルが経年劣化で断線していたことが発覚。耐放射線性がメーカーの仕様を満たしていないことなども判明し、2025年度後半にもロボット投入と予定されていたものの、「2026年度に試験的取り出し着手」と延期された。
試験的取り出しが実施されている2号機の隣、3号機では「燃料デブリの大規模取出し」が計画されている。これをめぐっては、7月に東京電力が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)に工程案を示し、一定の技術的な成立性が確認された。
「気中での取出し」「一部の燃料デブリは充填剤で固めてそれごと取り出す」という工法で格納容器の"横"と"上"からそれぞれ燃料デブリにアクセスする計画。放射性物質の飛散防止などのために設備や建屋を増設する必要があり「準備に12~15年かかる」。大規模取出しの開始は2037年度以降とされ、これまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となっている。
この3号機では大規模取出しに先駆け、小型の"マイクロドローン"を用いた格納容器内の内部調査が計画されている。
約12cm四方の"マイクロドローン"をこの細い配管から格納容器の中に飛ばし、映像取得などの情報収集をしたい考えだが、12月1日にドローンを格納容器の中に送り込むテストをしようとしたところ、ドローンを送り込むための装置が目的の場所まで進まず、途中で止まってしまうトラブルが発生。装置の経路となる配管の接続部に約5mmのずれが生じていることが確認され、これが障害となっている可能性があるとして解決策を検討中。調査について「2025年中の実施を断念」とした。
福島第一原発には燃料デブリのほかに使用済み核燃料も残されている。
1号機では2025年度内に大型カバーを設置完了し2027~2028年度に燃料取出しを開始予定。2号機でも2026年4~6月に作業を開始し、2028年度に完了予定としている。
2023年から始まった処理水の海洋放出は、12月22日に通算17回目の放出が完了した。
7月の津波警報・注意報、12月の津波注意報ではマニュアルに沿って放出の計画停止が行われたが、放出スケジュールに大きなずれは生じていない。
これまでの放出量は累計で約13万3,000t(タンク約133基分)。12月11日の時点で、処理水等の貯蔵量は放出開始前から約6%減少している。2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まった。
2026年は、国と東京電力が掲げる「2051年の廃炉完了」まで残り25年となる。
東電・小野副社長は「2026年もエポック的な作業が進む」として、1号機の大型カバー完成、2号機の使用済み燃料取り出し開始、2号機燃料デブリのロボットアームでの採取、3号機のマイクロドローン調査などに触れ「着実に安全第一で着実に進めていくことが大事だと思っている」とした。そのうえで、「2年前からトラブルが続いたが、作業員と一緒になってリスク抽出、手順確認といった地道な活動をしたことが2025年に大きなトラブルなく廃炉作業ができたことにつながったと思っている」として緊張感を持って廃炉作業を進めていく、と強調した。
















