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今年も続いた「令和の米騒動」 初の備蓄米放出も 消費者・生産者にも変化《2025重大ニュース》

福島県内の2025年の重大ニュースを振り返る。今回は、今年も続いた「令和の米騒動」について。高止まりが続く価格は、どうなっていくのだろうか?

■初の備蓄米放出

2024年から深刻化した「令和のコメ騒動」
猛暑や渇水などの影響で、23年産のコメの一等米比率が前年から約18ポイントも低下。全国のスーパーでのコメの販売数量は急激に落ち込み、店頭から消えたコメを追って買い占め・購入制限といった異例の事態が相次いだ。
2025年こそはと願われた豊作。しかし、災害対応ではなく初めて「流通不足解消」を目的に備蓄米が放出された。

■備蓄米を求めて...あれから

備蓄米は、大手スーパーからコンビニエンスストアまで注文が相次ぎ、福島県会津若松市の店舗では、用意していた300袋がわずか1時間で完売。
午前3時から並び、一番に備蓄米を手にした鈴木一雄さん。今は「備蓄米は食べていない。銘柄どうこうじゃなくて、あの時は備蓄米が安いから買う気になった」と話す。
いまは備蓄米ではなく、親戚からもらったコメを食べているという鈴木さん。2024年の夏から上昇を続けたコメの価格は高止まりとなり、消費者にとっては苦しいものの「主食としてのコメ」は手放せない。
鈴木さんは「元々が農家でコメを食べて育ったから、やっぱり麺類だって飽きるのは飽きてしまう。価格が上がっても、なくなったら買うほかない」と話した。

■専門店 新米の行方が気がかり

消費者だけでなく流通にも変化が...
福島県いわき市のコメ専門店「相馬屋」では、備蓄米12トンが1カ月ほどで完売したといい、営業部の井塚雄三さんは「一瞬でした。当時は新米が出る前で、世の中はコメが無いと騒がれていた時期だったので本当に一瞬でした」と振り返る。
いまは消費者の関心が移った「新米」販売の行方が気がかりだという。「今年の新米からさらに高騰して、銘柄米の販売かなり苦戦している。こちらに力を入れていきたい」と井塚さんは語った。

■生産者にも変化

私たちの食卓を揺るがした「令和の米騒動」を受けて、生産者も大きな決断を下した。
福島県大玉村の西村農園代表・西村忠男さんは「飼料用米もやめてしまいました。備蓄米もやめてしまいました」と話し、これまで「食用米」と並行して作っていた「飼料用米」をやめ、需要と価格の高い「食用米」に全集中したという。
東北農政局によると、令和7年産米の福島県内での作付面積は、前年から2割ほど増加し全国トップの増加率に。予想収穫量も6万トン以上の増加となった。
西村さんは「おいしいコメをお客さんに直接売ることによって『おいしいよ』と言われるのが一番うれしい。価格がどんどん下がってそれでも私たち困りますし、消費者のコメ離れっていうのが一番困ります」と話す。

■増産から一転、需要に見合った生産へ

消費者の思い...売り手が感じる変化...生産者の決断...「コメ騒動」は政治も大きく動かした。
石破前総理が打ち出した「増産」から一転、「需要に見合った生産」に方針が切り替えらえる。鈴木農林水産相は「大幅に増産して、これからもずっとこの増産のスピードが同じで、果たして本当にそれに見合った需要がすぐにあるのだろうか。需要を見誤らないように、そしてそれに合わせた生産をするということが、安定的な翌年への生産につながると思う」と語っている。

■今後、価格はどうなる!?

揺れる私たちの食卓...今後のコメの価格について、福島大学食農学類の小山良太教授は「昨年まではコメが無いから値段上がっていたが、今コメはある。今年豊作で。実際、高すぎて今売れてないので、大方の見方で言うと年明けぐらいから段々値段は下がっていくのではないか」と語る。
また小山教授は、持続可能な農業のためにも、5キロあたり3500円ほどが安定ラインになるのでは、と予想する。「少なくとも通常の食料品の物価高騰の幅、1.5倍とか1.7倍の範囲に収まっているかとか、そういうところは全体でしっかり検証する必要がある」と指摘した。

まだまだ尾を引く「米騒動」。生産・流通・消費、それぞれの立場が納得、そして安定する未来が望まれている。