現職の逆風・新人の追い風…風が吹いた福島選挙区 選挙結果を大解剖【参議院選挙2025】
7月20日に投開票が行われた参議院選挙。福島県選挙区は接戦の末、自民党の森雅子さんが議席を守った。一方、全国で躍進した参政党が県内でも支持を広げるなどこれまでにない選挙戦となった。
■4回目の当選 圧勝から一変…接戦に
当選から一夜明け、報道陣の取材に応じた自民党の森雅子さん。「福島県の皆様からの付託を受けた身として、しっかり公約を実現できるよう頑張ってまいりたい。本当に厳しい結果となりました、比例の皆様方の思いもしっかり私が代弁してまいる、そういった重い責任も感じている」と語った。
“圧勝”を重ねてきたこれまでの選挙から一変、今回は“接戦”を余儀なくされた。
7月20日午後11時前、歓喜に包まれた森陣営。森さん自らも不記載があったいわゆる“政治とカネ”の問題などで逆風を受けた選挙選を制し4選を果たした。
獲得した票は6年前の前回と比べて、11万7000票余り少ない32万7951票。立憲民主党の新人・石原洋三郎さんを1万8767票差で振り切り、東北の選挙区で唯一自民党の議席を守った。
森雅子さんは「厳しいご指摘も批判も真摯に受け止めて、謙虚に愚直に皆様方と約束してきたことをしっかり果たしていきたい」と語った。
一方、僅差で敗れた石原洋三郎さん。選挙選の最終日にも野田代表が駆け付ける“異例中の異例”の応援を受けたが…13年ぶりの“国政復帰”とはならなかった。「私が不徳の致すところでございまして、今回相手候補の対抗軸ということで決意をして取り組ませていただいたわけでございますが、そこが不十分であったと。私自身反省をするところでございます」と石原さんは語った。
■市町村ごとの勝敗に注目
得票率にすると約2ポイントの差になったが、その大きな背景のひとつが「市町村ごとの勝敗」。
51勝8敗となった森雅子さん。石原さんの地盤である福島市では2万票余りの差がつくなど、県北では石原さんがやはり強かったが、小さな市町村も含めて少しずつ勝利を積み重ねることで、県北分を補った。
注目すべきは会津と県南、衆院選での「福島3区」だ。
ここは2024年の衆院選で、いわゆる「政治とカネ」の問題で衆院議員2人が敗戦。立候補断念と議席を失っていて、石破総裁も白河市に入るなど票の掘り起こしに力を入れた。
逆に、立憲民主党から見れば、現職の国会議員の地盤で敗戦を喫してしまった、今後の選挙への影響も懸念されるダメージだ。
「3区」だけでなく県北を中心とする「1区」についても、自民党の国会議員に選挙活動の旗振り役がいないことが懸念されていたが、自民党県連が終盤になって各支部に1人1日100件の電話をかけて森さんへの支援を呼びかけていたということで、地域密着型の選挙戦が自民党への逆風を上回ったと見られている。
福島県選挙区では森さん勝利したが、東北では自民の議席は福島だけ。自民党県連は、今回の勝利を「自民党に対する県民の期待と失望が入り混じった選挙だった」「ここからが本当の勝負、正念場」と総括している。
森さんは復興に関する実績を中心に訴えを展開していたが、県連では「有権者が求めていたのは足元の経済対策に対する明確な訴えでそれが届かなかったかもしれない。そこが新たな政党への票の流れにつながった可能性もある」としている。
■参政党の躍進 風は福島でも
「新たな政党への票の流れ」という自民党も警戒する大きなうねりは、全国だけでなく福島県でも起きていた。
街頭で話を聞くと「僕の友達もみんないいねと言っていて。逆に親父なんかは新しい流れ過ぎてちょっと不安だって言っていた。そのあたり新旧交代の雰囲気なのかと感じている」「若い世代から周りからも支持を得ていたようなので、国民に寄り添った目線ではないが、そういったところが私たち世代とかと近いのかな。それで支持得たのかなと」「国民のための党みたいな感じで人気があったみたいですけど、ああいう方ならよくなるような気がします」との声が聞かれたのは参政党について。
今回、躍進した参政党は県内でも支持を拡大。“追い風”を背にした大山里幸子さんは敗れたものの、18万4286票を獲得した。
大山さんは「議席を得ることは叶いませんでしたが、多くの県民の皆様方がこの福島県を良くしたい、そして日本を良くしたいという熱い思いの方がたくさんいらっしゃったということがわかりまして、この福島県にも希望が見えたなと思いました」と語った。
■参政党 選挙の構図に影響
1議席から14議席と大躍進を遂げた参政党。福島県選挙区では議席獲得とはならなかったが、それでも選挙の構図に大きな影響を及ぼした。
出口調査で、特に特徴的なデータが2つある。
まずは「支持政党ごとの投票先」。自民党や立憲民主党の支持層からも票の流れはあるが、特に注目すべきは「支持政党なし」いわゆる無党派層の投票先だ。無党派層の28%が大山さんに投票している。
次に「年代別の投票先」。20代から40代までは、大山さんが森さんや石原さんを上回っている。
参政党が掲げる公約のうち、「減税」「子どもへの月10万円の給付」「行き過ぎた外国人受け入れに反対」この分かりやすい政策が刺さる層に刺さった、という結果だと思うが、実際に3年前の選挙から得票率にして7倍から8倍に伸びている。
自民党・立憲民主党の両県連は「参院選のように全県選挙区なら浸透に時間もかかるだろうが都市部なら分からない」「ブームが去ったとしてもコアな参政党支持層は残るだろうから県内でも選挙の形が大きく変わる可能性がある」と、参政党への警戒感を示している。
一方で、「耳障りの良い政策を訴えているだけで実現性に疑問があるものもある」ともしている。
衆参ともに与党過半数割れという混沌とした状況だが、逆に言えばそれぞれの党の主張や働きが見えやすくなるのかもしれない。私たちはこれから「投じた1票の行方」をしっかり見つめていく必要がある。
■期日前投票が増加 投票時間も短く
物価高や復興など私たちの生活や福島の将来に関わる対応が問われた選挙戦、投票率は58.39%だった。国政選挙としては初めて連休の中日が投票日だったということで、投票率の低下も懸念されていたが、前回3年前と比べて5ポイントほど上昇している。
一方で、「投票のありかた」をめぐっては考えるべき点もある。福島県内に設けられた1164の投票所今回すべてが閉鎖時刻を1時間以上繰り上げた。
私たちの思いを国政に反映させるための投票時間が短くなっているわけだが、一方で期日前投票は全体の52%あまりと半分を超え、投票日を待たずして1票を投じている有権者も増えている。
私たちも限られた時間で、政党や候補者の主張をしっかりと見極める目を持つ必要がありそうだ。