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通算13回目の処理水放出完了 竜巻・津波注意の中断により初の"遅れ"<福島第一原発>

東京電力は、8月3日午後0時22分に、2025年度2回目(通算13回目)の処理水の海洋放出を完了したと公表した。
7月14日に放出を開始し、21日間で7,873t(タンク約8基分)の処理水を海水で薄めて海に放出している。

今回の放出をめぐっては、7月21日に大熊町と双葉町に竜巻発生確度2(竜巻などの激しい突風が発生する可能性があり注意が必要である)が発表されたことから約12時間にわたり放出を停止。
また、7月30日には、福島県沿岸に津波注意報が発表されたことから、再び約2日間にわたって放出が停止された。
このため、当初の計画よりも2日ほど遅れての放出完了となった。約2年前の放出開始以降、計13回の放出の中で予定よりも完了が遅れたのは初めてだが、周辺海域での放射能濃度に有意な変動はなく、設備等への問題は確認されていない。

処理水の海洋放出は、放出前の水をためる水槽と海水面の高低差を利用して海に流れるようになっているため、海面が高くなって水が逆流してしまう恐れがある場合や、設備の安全性を確認すべき場合には放出をとめることが定められている。
震度5以上の地震や津波注意報、竜巻注意情報(発生確度2)、高潮警報などで放出を手動停止することが決まっていて、これまで2024年3月にも地震により手動停止したことがある。

また、東京電力は、今回の放出開始前の7月10日に、異常が確認された場合に放出を緊急停止するための「緊急遮断弁」を動かす通信ケーブルの1つに損傷が確認されたと公表した。ケーブルの表面に長さ3cmほどの「削れ」があったことが発覚したとしているが、緊急遮断弁を動かすための系統は2つあるうえに、損傷があったケーブルもすぐに予備に切り替えたため問題はないとしている。


福島第一原発では2023年8月に処理水の海洋放出を開始。
2025年度は、7回に分けて約5万4600t(タンク約55基分)を放出する計画で、これまでに海洋モニタリングで異常などが確認されていないことなどから、放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度を2024年度よりも高くする方針。
東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。

一方、処理水の海洋放出に伴い、中国が日本産海産物の輸入を全面的に禁止したことから、ホタテやナマコを中心に取引中止などの損害が発生。東京電力は2025年6月25日時点で約780件・750億円の処理水に関する賠償支払いを実施したと公表している。
中国は2025年6月、約2年ぶりとなる輸入再開を発表したが、処理水の海洋放出以前から禁輸措置が取られていた福島を含む10都県からの輸入停止は継続される。


処理水放出は、敷地を圧迫する1000基あまりのタンクを減らし、廃炉のためのスペースを開けることが大きな目的のひとつ。
2025月2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まっていて、まずは12基を2025年度中に解体する見込みとなっている。空いたスペースには燃料デブリの取り出しに関する施設を建設する計画。東京電力は廃炉の進捗に伴い、必要な施設を建設するためのスペースを作る計画を立てながらタンクの解体を実施していきたいとしている。


国と東京電力が掲げる福島第一原発の廃炉の完了は2051年。
タンク内のトリチウムがゼロになるのも2051年とされている。


【通算13回目(2025年度2回目)の処理水放出をめぐる経緯】
■7月14日:午前11時33分に放出開始(当初は8月1日まで19日間の放出の予定)
■7月21日:第一原発周辺への竜巻注意情報(発生確度2)の発表に伴い午後7時13分に放出を手動停止
■7月22日:午前7時4分、約12時間ぶりに放出を再開
■7月30日:午前8時37分に津波注意報が福島県沿岸に発表されたことに伴い午前9時05分に放出を手動停止
■7月31日:午後4時30分に福島県沿岸の津波注意報が解除
■8月1日:午前10時59分、約2日ぶりに放出を再開
■8月3日:午後0時22分に放出完了