暑さでハチが...受粉できず収量減の恐れ ミニトマト生産者は万策尽き今後を懸念 他の野菜にも酷暑の影響が
連日の猛暑により、福島県の農業生産者たちが深刻な影響を実感している。ハウス内では30℃超えの高温でハチの活動が鈍り、トマトの着果不良が発生。収穫量が例年より2~3割減少する恐れもあり、生産者からは「作物自体が作れなくなる」という懸念の声も上がっている。
■生産者が実感する高温の影響
フルーツトマトなどを特別な製法で手がける福島県田村市のグリーン・フォー・テーブル専務の富塚あゆみさんは、暑さによるミニトマトへの影響に危機感を募らせていた。「着果せずに花落ち・不着果になっている」と冨塚さんいう。
通常ひと房に10数個の実を連ねるミニトマト。しかし、ハウス内にはところどころ実のなり方がまばらな部分が見られる。
その原因について富塚さんは「30℃超えてしまうと、ハチたちがうまく動かなくなってしまう。暑さに負けてしまって動かなくなる。そういったことで、なかなか着果しなくなる状況」と説明する。
異常な暑さが続いたことで、受粉に欠かせないハチは動きが鈍く元気を失った状態に。花粉の質も低下し、実ができない場所も増える事態となっている。
このハウスでは1シーズンで10トン以上のミニトマトを収穫しているが、この状態が続けば例年より2~3割ほど収穫が減ってしまう恐れがあるという。
グリーン・フォー・テーブル社長の過足幸恵さんは「高温障害がひどかったりする品種もある。自分たちは農業に従事しているので、作物自体が作れなくなってしまうのではという懸念もある」と話す。
グリーン・フォー・テーブルでは、ハウスの表面に遮熱材などを塗り内部の温度を下げるなど工夫しているが、これ以上の対策は現時点で難しいという。
■直売所で見る猛暑の影響
一方、農産物の直売所でも品揃えに異変が起きている。朝に採れた野菜など200種類以上が並ぶ福島県郡山市の「ベレッシュ」。
今シーズン、天気の影響を大きく受けているというのが今が旬のモモ。雨不足のため甘さが凝縮されているが、生育には遅れがでていて入荷される量は去年よりも2割ほど減っていて、サイズも一回り小さくなっているという。
ベレッシュの武田博之さんは「暑さのせいで赤い色がまわらないとか、大玉がなかなかできないということで贈答品に詰められるようなモモが出てこない」と語る。
同じく、旬のトマトやキュウリは入荷が減少し、枝豆は暑さで実や葉が枯れてしまい例年よりも早く収穫が終わるとみられている。
武田さんは「天候との勝負なので、農家もどうすることもできないというところもあるが、おいしい野菜やくだものがいっぱいあるので、そちら楽しんでいただければ」と話した。
異常な暑さはいつまで続くのか?ブドウなど秋の味覚への影響も予想され、天候を心配する日が続く。
■夏野菜は高い傾向 葉物野菜はお買い得に
農林水産省は、毎月野菜の価格の見通しを発表している。これを見ると、多くの野菜が高温などの影響を受けていることが分かる。
価格が「平年と比べてやや上回る」見通しなのが、トマト・キュウリ・ピーマン・ナス・ニンジン・ダイコン・ホウレンソウなど。
一方で、気温が高く適度な雨が降ったことで生育が良好な野菜もある。ハクサイのほか、8月前半のうちはキャベツ・レタスも平年と比べてお得に買える見通し。
あくまで平年との比較なので、旬の夏野菜は相対的にお得に感じるものもあるかもしれない。