処理水賠償は約790億円に 放出約2年で東電「慣れや隙あってはならない」<福島第一原発>

東京電力は、福島第一原子力発電所での処理水の海洋放出をめぐり、2025年7月30日時点で約810件・790億円の賠償支払いを完了したと公表した。1か月ほどで約30件・40億円増加している。
2025年8月3日に通算13回目の放出が完了し、合わせて約10万2,000t(タンク約102基分)の処理水が薄められて海に放出されている。14回目の放出は8月7日からと計画されている。
2025年度は、これまでに海洋モニタリングで異常などが確認されていないことなどから、放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度を2024年度よりも高くする方針。東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。
東京電力福島復興本社の秋本展秀代表は8月6日の会見で「まもなく放出開始から2年を迎えるが、1回1回が真剣勝負。緊張感を持ってやっていく」「時間が経過して回数を重ねると無意識のうちに慣れや隙が生まれがちになるが、それは絶対あってはならない」と強調した。
処理水の海洋放出に伴い、中国が日本産海産物の輸入を全面的に禁止したことから、ホタテやナマコを中心に取引中止などの損害が発生。中国は2025年6月、約2年ぶりとなる輸入再開を発表したが、処理水の海洋放出以前から禁輸措置が取られていた福島を含む10都県からの輸入停止は継続される。
処理水放出は、敷地を圧迫する1000基あまりのタンクを減らし、廃炉のためのスペースを開けることが大きな目的のひとつ。
2025月2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まっていて、まずは12基を2025年度中に解体する見込みとなっている。空いたスペースには燃料デブリの取り出しに関する施設を建設する計画。東京電力は廃炉の進捗に伴い、必要な施設を建設するためのスペースを作る計画を立てながらタンクの解体を実施していきたいとしている。
国と東京電力が掲げる廃炉の完了は2051年。
タンク内のトリチウムがゼロになるのも2051年と計画されている。