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本当の強さを問う 初代タイガーマスクの一人息子が被災地・大熊町で始めた新たな挑戦【福島発】

闘う男たちの新たなリングは、今も一部が原発事故の避難区域となっている福島県大熊町。伝説の格闘家の息子が問い続ける「本当の強さ」と「新たな闘い」を追った。

■タイガーマスク 想いは被災地へ
その名を聞けば、多くの人が思い出す。かつて日本中のプロレスファンを魅了した初代タイガーマスク・佐山聡。"強さ"の象徴だった格闘家の想いは、いま原発事故の被災地に注がれている。
初代タイガーマスクの一人息子・聖斗(せいと)さん。「何十年も先を見据えるという部分と、格闘業界の未来のために何か作っていくという父の姿勢は見習っていきたい」と話すように、父の意思を受け継ぎ、格闘技業界の今後の在り方について想いを巡らせている。

■格闘家たちのもう一つの舞台
佐山聡さんはプロレスラーとして活躍後、今の総合格闘技の礎となる格闘技団体・修斗(しゅうと)を創設し、格闘家たちが活躍できる新たな舞台を作った。
息子の聖斗さんは「大熊町で、いざという時に緊急の対応できる部分も、かなり強みになるので格闘家はぴったり」と話し、強靭な格闘家たちの力を被災地の復興にも活かしたいと考えている。
2025年1月に発足した「大熊警備隊」。復興に貢献したいという息子の想いに応えて、警備隊の顧問は父の聡さんが務める。警備の仕事で、格闘家たちが安定した収入を得られるようにするのも狙いだ。

■町のヒーローになる
大熊町では住民票がある約1万人のうち、実際に居住している人は9%ほど。空き家を狙った窃盗など、治安の面でも不安が残る。
聖斗さんは「ここから10年20年と発展していくんだろうなと思うし、その時に基盤として安全面というものをちゃんと守っていきたい」と語る。
この日、聖斗さんが地元の子どもたちのために企画した「護身術講座」。まだ大熊警備隊としての仕事はないが、触れ合いを通して地域とのつながりを深めている。
「強さ=誰かを倒すだけのものじゃなくて、誰かを守るために使うっていうのも求められていくと思う。目指すのは、何かあったらあの黄色いおじさんに声かけたら何とかしてくれるっていう、町のヒーロー的な存在」と語る聖斗さん。闘うだけが強さじゃない。人を守る、支える、それも"強さ"だ。

「本当の強さとは何かー」その意味を問い続ける男の挑戦が、いま大熊町で静かに始まっている。