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採取デブリ「約1900℃以上で生成と推定」<福島第一原発>

福島第一原子力発電所2号機から採取された燃料デブリについて、分析を行う日本原子力研究開発機構(JAEA)は11月27日に記者説明を実施し、「約1900℃以上で核燃料の溶融・混合が起きたと推定される」と、デブリの生成過程について見解を示した。
これは2024年11月に、事故後初めて採取された燃料デブリの分析結果で、核燃料を覆っている「被覆管」だけでなく、燃料の集合体を覆う「チャンネルボックス」と呼ばれるカバーなどを巻き込んで溶け落ちたと推定。核燃料成分のウランなどの他に、採取デブリに混じり合った金属成分などの割合などから生成温度を推定すると、溶融には少なくとも約1900℃以上が必要だとしたうえで、今後も精査していく方針。
なお、当時の炉心の温度については「このサンプル1つから推定することは不可能」とした。

福島第一原発では、事故後13年8か月が経過した2024年11月にようやく、2号機で初めてとなる燃料デブリの採取に成功。採取量は約0.7gだった。採取デブリはこれまで、X線を通したり砕かれたり溶液に溶かされるなどしたりして分析が行われてきた。
JAEAはこの採取デブリについて、約1900℃以上で溶融したのち、約1350℃以上の状態で「固液混合の状態」となったと推定している。固液状態では流動性があるため、デブリを採取した場所の近くにも同様の燃料デブリが存在する可能性があるとした。これまでの検討と組み合わせ、事故がどのように進展したかの推定を進めることで、炉内状況の把握・燃料デブリ取り出しや内部調査の検討等に活用したいとしている。
JAEAは1回目の採取デブリについては当初計画の分析を終了したとしている。


福島第一原発2号機では2025年4月に2回目の採取が実施されている。
JAEAはこれまでに「2回目のデブリ」について、複数のカケラを合わせた総重量が0.187gで、体積は約0.03立方センチメートルとしていた。いずれも1回目に採取された燃料デブリの3分の1程度と少なくなっている。
一方、1回目の採取デブリと比べ核燃料成分の割合が多いとみられるとしている。JAEAは「採取場所の違いかどうかは分からない」としつつ、2回目の採取は1回目よりも1mほど格納容器の中心に近いところで行っていることを踏まえ「炉心の真下に落ちてきたものは同じような組成になっているかもしれない」と前回との違いを示唆している。

JAEAがX線などを使って分析した結果によると、1回目と2回目の採取デブリに共通しているのは、核燃料の主成分であるウランが表面に広く分布していることや人力で砕くことができることなど。一方、1回目で見られたような格納容器の比較的外側の部品などが由来とみられる成分由来の元素が非破壊分析では確認できず、炉心に近い核燃料由来の成分が中心となっている可能性があるとしている。


福島第一原発に残る燃料デブリは1号機に279t、2号機に237t、3号機に364tの計880tと推計されているが、2回の採取量を合わせても、約0.9gと1円玉1枚程度。
福島第一原発の廃炉は、2号機の燃料デブリ採取の着手をもって最終段階の「第3期」へと入った。国と東京電力は2051年の廃炉完了を掲げているが、何をもって「廃炉完了」の判断とするか、明確なゴールは示されていない。