異常事態!クマ出没 過去最悪の被害に初の緊急銃猟も 人里に寄せ付けないために《2025重大ニュース》
福島県内の2025年の重大ニュースを振り返る。今回は、今年の世相をあらわす漢字にも選ばれ、県内でも過去最悪の状況となっている「クマ」について。
■冬でも警戒続ける猟友会
足跡をたよりに山の中を歩く、福島県昭和村の猟友会。クマの痕跡がないか神経を尖らせる。猟友会両沼支部昭和分会の会長・羽染輝男さんは「かなり雪降った場合でも、沢の中にクマがいることがある。まだ警戒は必要。今年は特に」と語る。
2025年、村内の山林では枯れた木に生える「ナメコ」を多く目にする。実がクマのエサとなるナラが集団的に枯れる「ナラ枯れ」の被害が深刻な状態となっていて、山から里へクマがエサを求めて近づいている。
羽染さんは「里に降りなければよいが、降りてきたやつはどうしようもない。駆除するしかないと思う」と話す。
■増加した2つの要因
人身被害・目撃件数ともに過去最悪の状況となった2025年。[※12月16日時点 人身被害24人(+17人)目撃件数1959件(+1333件)]
エサ不足に加え、「クマの変化」が背景にあるという。クマの生態に詳しい福島大学食農学類の望月翔太准教授は「異常事態といえば異常事態。年々、人里で暮らすようなアーバンベアが毎年増えていっている中で、かなり人の生活圏に定着したクマがいたのではないかと。今年はそれに加えて山のエサがないので、山からも降りてきてしまった。そういった二つの要素からこれだけのクマの出没というのが見られたのではないか」と語る。
加えて、「人に対してすごく警戒をもっていたものが、人里で暮すようになって警戒心が薄れる。人間って怖い生き物ではないと覚えてしまって、事故がたくさん出てしまったという状況」と分析する。
■福島県初の緊急銃猟も
喜多方市松山町では、11月に体長80センチほどのクマが連日目撃され、ワナにかかったところを「緊急銃猟」で駆除した。
「緊急銃猟」とは、人の日常生活圏にクマやイノシシなどが出没した場合、一定の条件が満たした時に市町村長の判断で猟銃を使用した駆除などが可能となる制度。
ただ住民の安全確保や、銃弾が建物などに当たってしまった場合の被害を補償する保険の加入など、必要な条件や準備は多岐に渡る。
■自治体に求められる難しい判断
福島県内で初めて緊急銃猟による駆除を判断した喜多方市の遠藤忠一市長は、その難しさを痛感したという。
「やっぱり躊躇する。何かあったら大変ですから。ただ第一義的には市民の普段の生活を守る・安全を守るという中で執行した。住居地域と住居地域の間にある農地と雑地だったから、その辺は非常に良かった。同時に運よく日曜日だった。お休みになっている時間に実施できた」と振り返る。
また「ガイドライン作ったとしても予想できない。学校や公共施設、住宅地など、その場その場で判断しなくてはいけない。これが非常に難しい。動物は動きますから、判断が遅れれば別の被害がでるかもしれない。しかしながら判断する基準が難しい」とも語る。
市街地で猟銃を撃つ射手へのケアも課題の一つとして挙げ、クマを人里に寄せつけない対策の重要性を改めて感じたと遠藤市長はいう。
「緩衝地帯を作るとか、電気柵を作るとか。最後の最後に緊急銃猟に私はなるのではないか」と語った。
■新技術の力を借りて
クマへの新たな対策も始まっている。
昭和村が取り組むドローンによるクマの探索は、熱を検知するカメラで茂みに隠れたクマや効率的に足跡を見つけクマが近づいていないかを確認できる。
さらに、犬の鳴き声や銃声などを鳴らすことでクマを安全に追い払うこともできる。
村内でクマによる人身被害が発生したことを受け、防災用に導入していたドローンを活用し目撃場所などを定期的に巡回している。
現在、猟友会のメンバーは8人。深刻な人手不足が進む中で大きな助けになると期待されている。
昭和村役場の栗城拓弥さんは「新しい技術を活用しつつ、実際に活動してくださる方の負担を軽減して、より鳥獣被害のない村を作っていければ」と話した。
冬眠の時期に入り活動が落ち着きつつあるクマ。どのようにして被害を抑え、共存する環境を作っていくべきか、その問いに向き合い続けなればならない。















