住民と事業者の深刻な溝 メガソーラー問題 無責任な開発は各地で《2025重大ニュース》
福島県内の2025年の重大ニュースを振り返る。今回は、全国的にも逆風が強まっているメガソーラーについて。
■メガソーラーと向き合った一年
福島県福島市の先達山に作られたメガソーラーに対し、疑問を投げかける市民団体「先達山を注視する会」。
12月12日に2025年最後の集会を行い、外資系の運用会社に勤務経験がある専門家が多くのメガソーラーが投資に利用されている実情などを説明した。
先達山を注視する会代表の松谷基和さんは「率直に申し上げて、メガソーラーに始まりメガソーラーに終わった年でした。一年間、毎日のようにメガソーラーのことを考えていたなといって過言じゃない」と語る。
2025年9月末に商業運転が開始された一方、景観の悪化や太陽光パネルによる「光害(ひかりがい)」の問題が指摘されてきた先達山太陽光発電所。
発電所の管理運営を行うAmp社は、2025年11月に市に対し反射光のシミュレーション結果を12月末までに提出することと、2026年春から追加の植生を行うことをようやく報告した。
■二本松市 放置されたメガソーラー建設
しかし、解決の糸口が見えないメガソーラーはまだ福島県内に存在する。
二本松市針道。国道349号線沿いの2.3ヘクタールの敷地にメガソーラーが建設される計画だったが、1年以上放置されている。
2023年5月から工事が始まったが、着工から1年が経った2024年、大雨の際に敷地から大量の土砂が複数回にわたって流出、国道にも流れ込み通行止めになる事態も起きた。
福島県は、事業者に対し防災施設の不備や開発区域外での盛土を指摘し、2024年7月に工事の中止を指示。復旧計画の提出を求めたが、現在まで対応はとられていない。
関係者によると、開発を進めてきた、もともとの事業者が、このメガソーラー計画の承継先が見つからないことを理由に対応を放棄しているという。
宙に浮いたまま先が見えないメガソーラー計画。事業者に土地を貸した齋藤菊男さんは「あんな急な山に許可している行政も悪いと思う。ちゃんと山の具合を見て、行政でもちゃんと許可するようにしてもらいたい」と話す。
■西郷村 土砂が流出し被害も
無責任な開発は西郷村でも。羽太地区で2019年から工事が始まった「BluePower福島西郷発電所」。資金繰りを理由に、防災施設の整備よりも太陽光パネルの設置が優先され、土砂の流出が繰り返し発生。
現場のすぐ近くに住む近藤一雄さんは、自宅の周辺や田んぼに被害を受けた。
「最近は目立った被害はなくなったけど、以前の被害を受けたことがやっぱり頭の中にある。雨が降れば、やはり心配する」と近藤さんは話す。
福島県の行政処分などによる中断をはさみながらも、2025年12月中に工事が完了するはずだったが、2025年10月に突然施工業者が会社更生の手続きを開始。工事の再開時期も知らせないまま作業員が現場から撤退していったという。
近藤さんは「11月上旬に、急に工事の元請け会社が『工事はストップになります』と。私らも正直に言ってびっくりした」と語る。
事業者の都合で住民が振り回される状況に、近藤さんは危機感を口にする。「工事関係者が撤退して、その後被害が何も発生しないという保証はないわけですから、その点も踏まえてやはり改めて県の方にはそういう把握をしていただきたいと」と話す。
福島県によると、事業者から工期の延長についての届け出があり、今後も注視を続ける考えを示している。
住民と事業者の間に横たわる深刻な溝。政府は2025年12月、自民党がメガソーラーに対する支援廃止を求める提言案をまとめたことを受け、検討を加速させることを表明。住民を顧みない開発に厳しい視線が注がれている。















