15年で"10億分の1" 残る燃料デブリは880t<福島第一原発>
2026年2月10日、日本原子力研究開発機構(JAEA)は茨城県大洗町の研究施設で、厚さ約60cmのガラス越しに福島第一原子力発電所から採取された燃料デブリを公開した。
"廃炉の本丸"燃料デブリが入れられた瓶の外形は17mm。これまで分析のために砕かれたデブリは黒っぽい"粒"としてその中におさまっている。
【15年で約0.9g】
2011年の福島第一原発事故当時、1~3号機は稼働中で炉心に核燃料が格納されていたが、地震と津波で電源が失われたことで炉心を冷やす機能が喪失。核燃料が過熱し、金属やコンクリートを巻き込んで冷え固まったものが"燃料デブリ"となった。
今もなお、強い放射線を発し続ける燃料デブリには、人が直接近づくことはできないため、正確な位置や形状の全容は把握しきれていない。
燃料デブリに触れた地下水や雨水などは"汚染水"となって発生し続ける。2025年度の汚染水の発生量は1日あたり約60t、平年の雨量に換算すると約70tと想定される。"2028年度までに1日あたり約50t~70tに抑制する"は3年前倒しで達成できる見通しだが、燃料デブリが存在し、地下水や雨水がそれに触れ続ける限り、根本的な解決は遠い。
汚染水から大部分の放射性物質を取り除いたうえで海水で薄めて海に放出する"処理水の海洋放出"は今も継続中。高い放射線が放出される限り近隣住民の帰還環境も整わないため、デブリへの対処が廃炉の"最難関"であり"本丸"とされている。
事故から10年、2021年に計画されていた燃料デブリの試験的取り出しは、ロボットの開発の遅れや、格納容器につながるロボットの経路に"詰まり"が発覚したことなどから延期。作業工程のミスや機器の不具合などが立て続けに発生し、初めて2号機からの採取に成功したのは2024年11月。わずか0.7gほどが採取され、茨城県の施設に運ばれた。事故からは約13年8ヵ月が経過していた。
その後、2025年4月には2回目の採取に成功。採取量は前回と合わせて約0.9g。
福島第一原発に残ると推計される燃料デブリ約880tの"10億分の1"だ。
【粒から分かった"約1900℃以上で溶けたと推定"】
燃料デブリの分析を行うJAEAがX線などを使って分析した結果によると、1回目と2回目の採取デブリに共通しているのは、核燃料の主成分であるウランが表面に広く分布していることや人力で砕くことができることなど。断面を見たときに黒っぽい部分があることでウランが存在すると分かるという。
一方で違いは"核"の割合とみられる。1回目のデブリで見られたような格納容器の比較的外側にあった部品などが由来とみられる成分が確認できず、2回目に採取したデブリは炉心に近い核燃料由来の成分が中心となっている可能性があるとしている。2回目の採取は1回目よりも1mほど格納容器の中心に近いところで行われている。
また、燃料デブリの生成過程については、「約1900℃以上で核燃料の溶融・混合が起きたと推定される」と見解を示している。
1回目に採取された採取デブリに含まれる金属成分などの割合などから生成温度を推定すると、溶融には少なくとも約1900℃以上が必要だとしたうえで、今後も精査していく方針。
なお、当時の炉心の温度については「このサンプル1つから推定することは不可能」とした。今後も事故がどのように進展したかの推定を進めることで、炉内状況の把握・内部調査の検討等に活用したいとしている。
【かげる"次の採取"への道】
これまでに行われた2回の採取では、ロボットの通り道となる配管に、事故の熱で溶けたケーブルなどが溶け固まって詰まっていたため、比較的狭い場所を通ることができる"釣り竿型"のロボットが採用された。3回目の採取はこれまでのロボットではなく、78億円をかけて製作した大型の"ロボットアーム"で実行する計画となっている。
しかし、"ロボットアーム"はこれまで、一部のケーブルが経年劣化で断線していたことが発覚。実際の環境を模擬した試験でカメラが配管に引っかかり、さらにカメラの耐放射線性がメーカーの仕様を満たしていないことが判明するなど、相次いで問題が浮き彫りに。東京電力は対応に追われ、当初「2025年度後半にも」としていた投入時期を「2026年夏に着手」と延期した。
福島第一原発に残る燃料デブリは1号機に279t、2号機に237t、3号機に364tの計880tと推計されている。
廃炉の工程は、1回目の燃料デブリ採取をもって最終段階の「第3期」へと入った。国と東京電力は2051年の廃炉完了を掲げているが、何をもって「廃炉完了」の判断とするか、明確なゴールは示されていない。
【2号機燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送
■2024年12月26日:JAEA「採取デブリからウラン検出」公表し「典型的な燃料デブリ」と評価
■2024年12月:デブリの非破壊分析が完了・分析機関に分配するためデブリを砕く
■2025年1月8日:JAEA「5つの分析機関への分配決定」公表
■2025年1月10日:デブリの一部をJAEAからMHI原子力研究開発株式会社(NDC)に輸送
■2025年1月22日:デブリの一部をSPring-8とJAEA原子力科学研究所に輸送完了
■2025年1月31日:デブリの一部をJAEAから日本核燃料開発株式会社(NFD)に輸送。予定されていたすべての研究施設への輸送が終了。
■2025年3月25日:2回目の採取に向け前回ミスがあった「棒の順番ミス」の訓練開始
■2025年4月14日:東京電力「準備が整った」として4月15日に2回目採取に着手することを公表
■2025年4月15日:ロボットの先端が格納容器につながる扉を通過し「2回目の採取着手」
■2025年4月17日:燃料デブリの2回目の把持・吊り上げに成功
■2025年4月19日:2回目の試験的取り出しで燃料デブリを格納容器外・配管の中にまで引き出す
■2025年4月20日:2回目の試験的取り出しでつかんだ燃料デブリの"引き出し"作業完了
■2025年4月21日:つかんだ燃料デブリが搬出基準(1時間あたり24ミリシーベルト以下)を下回っていることを確認
■2025年4月23日:事故後2回目の試験的取り出し作業完了
■2025年4月25日:燃料デブリ・事故後2回目の「原発構外」搬出完了
■2025年8月28日:3回目の取り出しに使用する「ロボットアーム」のカメラの耐放射線性がメーカーの仕様を満たしていないことを公表
■2025年9月25日:3回目の取り出し着手を「2026年度」に見直し
■2025年2月25日:3回目の取り出し着手を「2026年夏頃」とする
















