「原子力安全は終わりなき"journey"」「柏崎刈羽6・7号機"良好な状態"」原子力改革監視委員会

東京電力は5月27日に原子力改革監視委員会を開催し、委員会からは「安全改革は着実に進捗しているものの、ヒューマンエラー等のトラブル事象は依然として発生している」との指摘がなされた。
原子力改革監視委員会は、東京電力の「原子力安全」と「社会からの信頼回復」に向けた取り組みを専門家や有識者が外部の視点で監視・監督するために設置された組織で、委員会の開催は22回目。委員長を務めるのは、米国原子力規制委員会(NRC)元委員長のデール・クライン氏。
同委員会は福島第一、第二原子力発電所及び柏崎刈羽原子力発電所を視察し、5月27日に開催された会議の場で東京電力から原子力改革に関する取り組み状況について説明を受けたという。
委員会の終了後、デール・クライン委員長は記者会見を開き「原子力安全は終わりなきjourney(旅路)だ」と発言。「原子力安全は1人1人の責任ではあるが、東電社長である小早川氏が役割を果たす、社長の肩にかかっているということになる」とした。
福島第一原発の廃炉作業をめぐっては、
■2023年10月:汚染水から放射性物質を取り除き処理水にする過程にある浄化設備で、設備の洗浄中にホースが外れ、作業員2人が放射性物質を含む水で汚染
■2024年2月:汚染水の浄化装置で、作業員による弁の締め忘れにより、汚染水を含む水が敷地内に漏えい
■2024年2月:木材などの廃棄物を焼却する施設で大量の水蒸気が発生し火災警報
■2024年4月:掘削作業のミスで地下の電源ケーブルを傷つけ停電。処理水放出が約6時間半にわたり停止
と相次いでトラブル・ミスが起きたことから、東京電力が構内すべての作業のリスク点検を実施し、995件の作業のうち約68%にあたる675件で、現場の明るさ不足や転倒リスク、放射性物質による汚染リスクなどの要改善点があったと公表している。
委員会はこの点検などを確認し評価したうえで、「東京電力単体ではなし得ない業務があることは否定できないため、外部の理解を得る努力を継続して行うことが求められる」とした。
また、2024年11月、2025年4月と実施された燃料デブリの試験的取り出しをめぐっては、第1回目の作業でミスや不具合があったものの「高線量の状況下での作業にもかかわらず燃料デブリの取り出しが安全な形で行われたことは大きな成果」と評価。「今後も細心の注意を払い、緊張感を持って取り組んでほしい」としている。
また、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)についてデール・クライン委員長は、6・7号機ともに「個人的な見解として安全上の懸念はない」「良好な状態であり運転に向けた準備ができていると感じた」とした。
「一般的に言うと、長く運転をしていない発電所は設備や人のスキルが錆びついている可能性がある」とした一方、「私の視点では炉心の状態や教育訓練の状態は良好なレベルにある」と評価。「実際に運転をしないと確認できない設備もある」として、「急速に出力を上げるのではなくて、段階的に出力を上げるなどして、機器が想定通りに運転しているかどうかを確認するといった保守的なやり方を期待する」とした。
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