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"マイクロドローン"投入準備 3号機原子炉の水位低下作業開始<福島第一原発>

燃料デブリの大規模取出しが計画されている福島第一原子力発電所3号機で、超小型の"マイクロドローン"で原子炉内部調査を行う準備として、東京電力は9月1日から原子炉内の水位を下げる作業を開始した。

3号機での燃料デブリの本格的な取出しの開始は2037年度以降とされていて、東京電力は「ここ1、2年では、現場の放射線量低減などの環境改善や、内部調査の準備・実施を行う」としている。
一方で3号機は事故後、原子炉への注水などで格納容器内の水位が高い状態にあり、格納容器につながる経路として整備されているのは比較的高い位置にある内径の小さい配管のみとなっている。今後は内径の大きなアクセスルートの開拓が必要だが、現状の調査として約12cm四方の"マイクロドローン"をこの細い配管から格納容器の中に飛ばし、映像取得などの情報収集をしたい考え。
マイクロドローンを使った調査は2025年10月以降に計画されているが、ドローンが格納容器の中で水に浸かって不具合を起こしてしまわないよう、原子炉の注水量を減らし、水位を下げる方針。9月1日に水位低下作業を開始し、この日は原子炉への注水量を1時間あたり約0.7t減らした。東京電力は原子炉内の温度や放射線量などを監視しながら慎重に注水量を減らすとしていて、10月ごろまでに段階的に水位低下作業を行う。

また、3号機では、8月から原子炉建屋1階で「2011年の事故前に作業員が点検のために原子炉に入るための通路として使用していた部屋」の調査を開始している。大規模取出しの主要なアクセスルートとなるのはこれとは別の通路と計画されているが、内部調査の結果によっては新規ルートに加えたり今後の内部の確認・調査に使用したりすることも想定されている。本調査では格納容器につながる扉を開けるなどの操作はしない。
この部屋は2016年にも放射線量の測定などの調査を行ったが、1時間あたり13~80ミリシーベルトと非常に高い線量が計測された。調査もカメラや線量計を搭載した遠隔操作ロボットを使用して実施する。

ロボット、マイクロドローンともに遠隔操作技術が必要になり、大規模取出しに向けてどこまでの情報が取得できるかが問われている。


3号機の燃料デブリ大規模取出しをめぐっては、2025年7月に東京電力が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)に工程案を示し、一定の技術的な成立性が確認された。
「気中での取出し」「一部の燃料デブリは充填剤で固めてそれごと取り出す」という工法で格納容器の"横"と"上"からそれぞれ燃料デブリにアクセスする計画。放射性物質の飛散防止などのために設備や建屋を増設する必要があり、東京電力は「準備に12~15年かかる」としている。大規模取出しの開始は2037年度以降とされ、これまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となっている。


福島第一原発では、事故後13年8か月が経過した2024年11月にようやく、2号機で初めてとなる燃料デブリの採取に成功。その後、2025年4月に2回目の採取を実施した。
格納容器につながる配管の中に、事故の熱で溶けたケーブルなどが固まって詰まっていたため、2回の採取とも、比較的狭い場所を通ることができる"釣り竿型"のロボットを使用。
一方で、78億円をかけて製作した大型の"ロボットアーム"を「2025年度後半にも投入予定」としていたが、搭載予定のカメラにメーカーの仕様通りの耐放射線性が確認できなかったものがあったことを明らかにしていて、現状で全体の工程に与える影響は精査中としている。

燃料デブリの取り出しは"廃炉の最難関"とされている。
福島第一原発に残る燃料デブリは1号機に279t、2号機に237t、3号機に364tの計880tと推計されているが、2回の採取量を合わせても、残るデブリの10億分の1程度と、取り出し完了までの道は遠い。
福島第一原発の廃炉は、2号機の燃料デブリ採取の着手をもって最終段階の「第3期」へと入ったが、何をもって「廃炉完了」の判断とするか、明確なゴールは示されていない。


国と東京電力は、2051年までの廃炉完了を掲げている。