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処理水放出2年で賠償は約800億円に これまで周辺海域モニタリングで異常はなく<福島第一原発>

東京電力は、福島第一原子力発電所での処理水の海洋放出をめぐり、2025年8月27日時点で約840件・800億円の賠償支払いを完了したと公表した。1か月ほどで約30件・10億円増加している。

福島第一原発での処理水の海洋放出は2023年8月24日に開始され、約2年が経過した8月25日には通算14回目の放出が完了。これまでに約11万t(タンク約110基分)の処理水が放出された。
処理水の放出は、敷地を圧迫する1000基あまりのタンクを減らし、廃炉のためのスペースを開けることが大きな目的のひとつ。1号機から3号機の原子炉の中に残される"燃料デブリ"に地下水や雨水などが触れることで発生する"汚染水"から、大部分の放射性物質を取り除き、海水で薄めたうえで海に放出する。
東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。
2025年8月の時点で、処理水等の貯蔵量は放出開始前から約5%減少している。貯蔵されている水の中には、放出の基準を満たせていない"処理途上水"も含まれている。

2025月2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まり、まとまった場所としては初めて「12基分のエリア」の解体が9月3日に完了した。このエリアは3号機燃料デブリ取出し関連施設の建設場所として計画されている。
作業中に大きなトラブルや周辺環境への影響は確認されていない。
東京電力は引き続き、廃炉の進捗に伴って必要となる施設の建設計画を立てながら残るタンクの解体を実施していきたいとしている。


処理水の海洋放出をめぐっては、これに伴って中国が日本産海産物の輸入を全面的に禁止したことから、ホタテやナマコを中心に取引中止などの損害が発生した。中国は2025年6月、約2年ぶりとなる輸入再開を発表したが、処理水の海洋放出以前から禁輸措置が取られていた福島を含む10都県からの輸入停止は継続される。
一方、原発事故後に福島県産の食品に対して55の国や地域が輸入規制を行ったが、現在は6にまで減少している。また、このうち台湾は「日本産の全ての食品に対する産地証明書の添付」「福島を含む5県に放射性物質の検査報告書の提出」を義務づけているが、規制の撤廃に向けて60日間の意見公募を始めたことを9月1日に明らかにしていて、年末までにいずれの規制も廃止される見通しとなっている。


国と東京電力が掲げる廃炉の完了は2051年。
タンク内のトリチウムがゼロになるのも2051年と計画されていて、東京電力は「安全を最優先に緊張感をもって放出を実施していく」としている。