福島県内初のジビエ加工施設が完成 原発事故と野生動物 ただ駆除されるだけだった命と向き合う一歩に
野生動物により年間164億円もの農産物の被害が発生している。この背景もあり、近年のジビエの利用は急速に拡大。しかし、これまで福島県内では原発事故の放射能の影響などで規制がかかり、これまで野生動物は駆除はされていても利活用が出来ない状況だった。長く「駆除だけにとどまってきた福島の現実」それを変えようとする新たな一歩が、動き出した。
■獲って加工し、いただく
福島県郡山市で10月3日から稼働している、福島県内初のジビエの加工施設「ふくしまジビエファクトリー」。
ここでは郡山市内で獲れたシカなどを、放射線の全頭検査を条件に震災後初めて食肉として利活用できるようになる。(※この日のものは県外産)
施設を作ったの平山真吾さんは、隣にあるレストラン「四季彩平山」を経営。自然界から獲れた天然食材を活かした料理を提供するこのレストランでは、平山さんが可能な限り自らの足で食材を集めることにこだわっている。
「自然界から少しだけ、僕らが食べる分だけ命をおすそ分けして頂く。その生命力を、うちで食べて頂く人の生命力の返還してもらえればいいと料理しています」と平山さんはいう。
■命をいただくということ
平山さんは、農作物の被害を減らすため狩猟を行ってきたが、これまで福島県内では放射能による出荷制限の影響で野生動物を利活用できず、もどかしい思いがあったという。
「動物たちは生きるのに必死。ただ殺すというのは悲しい。せっかく自分で獲った野生動物を、ちゃんと自分の手で一から捌いて、お店で提供したいという思いが一番あったので、加工施設を作ってよかった」と話す。
■ジビエを身近に
完成した施設に野生動物が搬入されると、まず汚れを落とし皮や内臓などを処理する。その後、野生動物の熟成期間に専門機関が放射線検査を実施し、検査に問題がなければ客への提供や販売が可能になる。
平山さんは「ジビエの良さを、どんどん知ってもらうきっかけになると思う。そうすれば、今まで以上に野生動物への関心も深まるし、尚且つおいしく食べるというところまで持っていきたい」と語る。
「ふくしまジビエファクトリー」では、福島県内で獲れたジビエをお店で提供することからスタートし、今後は頭数が確保出来ればジビエの販売など県内の野生動物の活用を拡げていく考えだ。
■原発事故の影響
平山さんの決意の背景には、福島県内のジビエを取り巻く環境がある。
東日本大震災後、福島県内全域でクマ・イノシシ・シカなど多くの野生動物には出荷制限・摂取制限がかけられた。
被災地を中心に野生動物が急増し、農作物の被害なども右肩上がりに上昇した。これまで福島県内では、野生動物の駆除を行ってきたが、主に焼却施設などで処分されるだけだった。
しかし、震災から14年が経過し、捕獲された野生動物のモニタリング検査ではほとんどが放射線量が基準値を下回るなど安全性が証明されてきた。
■限定的に出荷が認められる
今回、平山さんの取り組みによって、原子力災害対策特別措置法に基づき、この施設でのみ郡山市のシカを対象に、全頭検査を条件に出荷制限が解除された。あくまで郡山市での限定的な取り組みが認められたことになる。
平山さんは野生動物の奪った命が有効的な活用が進むように、ジビエの魅力を広めていきたいと話している。この取り組みが、いのちと向き合う新たな福島の形につながっていくのか、注目される。
- 絶好調!B2・福島ファイヤーボンズ 好調のワケはハードな練習で培った走る力 チームを勝利に導く新戦力
- カフェや眼鏡店 こだわりの専門店が集まる県庁通り商店街 「この街が目的地に」新たな賑わい生む仕掛け人
















