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記者プレ

知的障がい・自閉スペクトラム症の息子と共に

記者の視点で社会や地域の話題を紹介する「記者プレ」
阿部加奈子記者が注目したのは「発達障害」について。周囲のサポートで本人の「生きづらさ」をどう減らしていけるのか。障がいと向き合う家族の姿を追った。

動画はYouTube 福島ニュース【福テレ】でご覧いただけます。

「自閉スペクトラム症」をご存じだろうか?対人関係が苦手だったり、強いこだわりがあったりする発達障がいの一つで、特性の強さや現れ方は一人一人異なり生活に支障を来すケースも少なくない。周囲のサポートで、本人の「生きづらさ」をどう減らしていけるのか、障がいと向き合う家族の姿を追った。

気付かされた"素晴らしい存在"

石川弘美さんは、福島県福島市の自宅で夫と高校3年の士誠さんと3人で暮らしている。士誠さんが生まれたのは2005年。1年が過ぎた頃、周りの子どもと比べて成長が遅いと感じるようなった。
「言葉が話せない」「目線が合わない」
最重度の知的障がいと、自閉スペクトラム症と診断された。

士誠さんの感情を、小さなサインから読み解く石川さん。
「伝わらないので大きい声を出したり動き回ったりして、相手に一生懸命伝えようという気持ちの行動ですね。これかな?あれかな?って、一つひとつ意志を確認するというか、一回一回確認して一緒に探していく。これが日常的な、うちの家族のコミュニケーションの仕方になります」

かつては、ほかの子どもを見るたびに引け目や劣等感を感じていた石川さん。その考えを変えるきっかけとなったのが、すべての子どもたちを肯定し尊重する北欧の考え方を取り入れた、療育機関の先生からの言葉だった。

「士誠くんは素晴らしい存在なんだよって。生まれてきて、それだけでも素晴らしいことなんだから、お母さん認めてあげてっていうふうに言われて。障がいがあってもやっていけるんじゃないかっていうところで、少しずつ受け入れられるようになってきたっていうところがあります」

自立への一歩 修学旅行の練習

福島市内の特別支援学校に通う士誠さん。
7月に修学旅行で東京ディズニーランドに行くため、練習を始めたことがある。多くの人と様々な音が響く場所で、パニックを起こさないでいられるか。車いすに乗るのにも理由があった。

「歩く動作と物を買う動作を一遍に処理できないので、まずは歩くというところは補助的に車いすを使って、自分で見て好きなものを選ぶという動作を優先してパニックを起さないで楽しく自分のものが買えるように」

この日は、買い物客の多さや店内の音楽に少し不安そうな表情も。
「初めての場所だと、自分がどこにいるんだろうとか何が起こるんだろうって不安いっぱいだと思うんですけど"大丈夫だ"っていう経験を積み重ねて、楽しんできてほしいなと思います」

2泊3日の修学旅行に、保護者は付き添わない。
石川さんと士誠さんにとっては大きな挑戦であり、その先にある自立の道への一歩になる。

感じる社会からの分断

この17年間、不安や悩みで押しつぶされそうになる時もあったという。
「うちの息子が生まれてこなかったら、きっとこの大切さ支え合いとか助け合いという気持ちが、こんなに大事なことなんだなっていうことに気づけなかったので、やっぱり生まれてきてくれて良かったなって今思います」

支えてくれた人への感謝の気持ちを抱く一方、「障がい者」への対応は「地域」「教育現場」「社会」で大きく分断されていると感じている。

「息子が生まれる前は、障がいと聞くとどうしても車いすに乗っていて一般の生活はなかなか難しい方なのかなっていうふうな捉え方をしていたんですけど、今は障がいがある前に"人だ"って思うんですね。"一般"って言われてる生活・社会に標準がなってると思うんですけど、でもそれは社会側でそういうふうに決めてるだけで 、社会がもう少し歩み寄ってその子たちに合わせられる、そんな社会になってくれたらいいのかなと思います」

政策だけでなく個人レベルで考える

日本の障がい者政策については、2022年に国連が改善するよう勧告している。
教育面では、通常の学級と分離されている「特別支援教育」の中止を求め、障がいのある子もない子も、ともに学ぶ「インクルーシブ教育」の方向性が示された。
国の政策だけでなく、社会を作る私たちの心に分断・差別の芽はないか、考える必要があるとも感じる。

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