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"マイクロドローン"訓練公開 3号機デブリ本格取出しに向けた内部調査へ<福島第一原発>

燃料デブリの大規模取出しが予定される福島第一原子力発電所3号機で、超小型の"マイクロドローン"による内部調査が計画されていることをめぐり、東京電力は10月1日にこれを使った訓練の様子を公開した。
訓練が公開されたのは千葉県柏市の訓練施設で、ドローンが飛行する予定となっている原子炉内部をほぼ実物と同じ型で再現。ドローン操縦者が、搭載されたカメラの映像を確認しながら遠隔で操作した。
東京電力の担当者は「事故を起こした格納容器内はどういった状況であるのか分からないため、このような施設で操縦技術を高め、飛行に伴うリスクの抽出を行っている」「ドローンが小さければ小さいほど操縦技術が求められるため、1つずつリスクをつぶしながら現場の作業に適応できるように準備を行っている」などと話し、実際の調査では、大規模取出しに使用する可能性がある配管の状況や原子炉圧力容器を支える土台の状況などの情報を得ていきたいとした。

3号機は事故後、原子炉への注水などで格納容器内の水位が高い状態にあり、格納容器につながる経路として整備されているのは比較的高い位置にある内径の小さい配管のみとなっている。今後は内径の大きなアクセスルートの開拓が必要だが、現状の調査として約12cm四方の"マイクロドローン"をこの細い配管から格納容器の中に飛ばし、映像取得などの情報収集をしたい考え。
東京電力は、ドローンが格納容器の中で水に浸かって不具合を起こしてしまわないよう、9月1日から原子炉の注水量を減らし、水位を下げる作業を実施している。
東京電力は9月25日の会見で、「3号機はこれまで水中ロボットを用いて原子炉の内部調査をしているが、上部の状態が見えていない」としたうえで、今回のマイクロドローン調査では"縦型カメラ"を用いて上部の映像を取得したい考えを示した。「本格的な取出しに向けて、圧力容器の底部がどうなっているかは非常に重要な情報になる」としている。
一方、マイクロドローン調査は当初「2025年10月以降」としていたが、「訓練や、原子炉内の水位を低下させる作業の進捗状況から、10月の実施は難しいと判断した」として、調査時期を「11月以降」に見直した。

また、3号機では、8月から原子炉建屋1階で「2011年の事故前に作業員が点検のために原子炉に入るための通路として使用していた部屋」の調査も行われている。大規模取出しの主要なアクセスルートとなるのはこれとは別の通路と計画されているが、内部調査の結果によっては新規ルートに加えたり今後の内部の確認・調査に使用したりすることも想定されている。本調査では格納容器につながる扉を開けるなどの操作はしない。
この部屋は2016年にも放射線量の測定などの調査を行ったが、1時間あたり13~80ミリシーベルトと非常に高い線量が計測された。調査もカメラや線量計を搭載した遠隔操作ロボットを使用して実施している。
ロボット、マイクロドローンともに遠隔操作技術が必要になり、大規模取出しに向けてどこまでの情報が取得できるかが問われている。


3号機の燃料デブリ大規模取出しをめぐっては、2025年7月に東京電力が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)に工程案を示し、一定の技術的な成立性が確認された。
「気中での取出し」「一部の燃料デブリは充填剤で固めてそれごと取り出す」という工法で格納容器の"横"と"上"からそれぞれ燃料デブリにアクセスする計画。放射性物質の飛散防止などのために設備や建屋を増設する必要があり、東京電力は「準備に12~15年かかる」としている。大規模取出しの開始は2037年度以降とされ、これまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となっている。


また、2号機で実施している3g以下の燃料デブリを採取する"試験的取り出し"でも遅れが生じている。福島第一原発2号機では、事故後13年8か月が経過した2024年11月に初めてとなる燃料デブリの採取に成功。その後、2025年4月に2回目の採取を実施した。
格納容器につながる配管の中に、事故の熱で溶けたケーブルなどが固まって詰まっていたため、2回の採取とも、比較的狭い場所を通ることができる"釣り竿型"のロボットを使用。
一方で、78億円をかけて製作した大型の"ロボットアーム"は一部のケーブルが経年劣化で断線していたことが発覚。また、ロボットアームに搭載するカメラを追加して実際の環境を模擬した試験を行ったところ、配管に引っかかるという事象も発生。さらに「カメラが耐放射線性がメーカーの仕様を満たしていない」という不具合が発覚し、カメラの交換が必要になったとして、当初「2025年度後半」とされていた3回目の採取を「2026年度着手」と延期した。


国と東京電力が掲げる2051年までの廃炉完了に向け、安全かつ着実な作業の実行が求められている。