巨額の不正融資に反社への資金提供...福島の経済界に激震 いわき信用組合 《2025重大ニュース》
2025年、福島県の経済界に激震を与えた「いわき信用組合」。地域の金融機関が元経営陣らに対し、巨額の損害賠償を求めて裁判を起こす異例事態。経営陣や元職員が語る真実、そして「地域の最後の砦」にかけられた願いは...
■元職員が語る巨額不正融資
2025年5月、第三者委員会の調査で明らかになったのは、疲弊した大口融資先に限度額を超える融資を行い、元職員による横領被害を補填するためペーパーカンパニーや預金者の名義を使って勝手に開設した口座を使い、巨額の不正融資を行ったというもの。
福島テレビの取材に応じた元職員は「本部からの依頼があっての融資だから、何も言わずにやってくれといったような内容だったと思います。全く名前も知らない聞いた事のない方の融資でした」という。
「当時、何か声を上げていれば、もしかしたら状況は変わったかもしれませんが、何か物申す勇気もなかった」と、疑念を感じながらも声は上げられなかったと話す。
■反社へ10億円もの資金提供
いわき信用組合に流れる「見えない圧力」...それは、内部だけの問題ではなかった。
10月、特別調査委員会の調査で発覚したのは「反社会的勢力への資金提供」だった。1990年代、右翼団体とのトラブルを反社会的勢力に「解決金」を支払って止めさせたことをきっかけに、約30年にわたり続いていた関係。約10億円もの資金が「反社」へと提供されていた。
預金者からは「びっくりしましたね。地元でこんなことが起きるとは信じられませんでした」「預金口座が使えなくなったらどうしようと、ドキドキしていました。もう半分以上は移していて、今、最後のお金をおろしてきました」との声が聞かれた。
■専門家の指摘
利用者にも不安を与えた「黒いカネ」の疑惑。金融機関の歴史に詳しい埼玉大学の長田健教授によると、1990年代に全国的に反社会的勢力と金融機関の関係が問題となり、ガバナンス改革が進められたという。
長田教授は「今回、不正が長い間隠蔽されていた。さらには発覚した後も証拠を隠滅しようとしていた。ここが最大の問題。国内外でいろんな工夫がされてきたにも関わらず、未だにいわき信用組合はそんな改革もせず、古い体質でいた。まだこんな企業があったのだというのが率直な感想」と話す。また「信用組合という小さな組織体であるがゆえに隠し続けること、改革せずにここまで来ることができたのだろう」と話した。
■信用と信頼を取り戻せるか
組織のなかで隠し通されてきた秘密...これらの不正の中心にいたとされる江尻次郎元会長は取材陣の問いかけに対し「お話できませんので」「言えません」「お話しするつもりはありません」を繰り返す。
口をつぐむ元会長をはじめ、古い組織体制との決別のカードを切るかのように提起された旧経営陣への32億円あまりの損害賠償。
いわき信用組合の金成茂理事長は「組織で取り組まなければならない課題は山ほどある」として、金融庁からの行政処分を受け止め約160人の役職員を対象にコンプライアンス研修を実施している。
組合員の中から選ばれ、決算や役員選任にも関わる「総代」の一人は、地域としては「いわき信用組合」の再生を期待するしかないと話す。
「私も創業から大変お世話になって、かなり『地域密着型』というか、私たち寄りに相談乗っていただく銀行っていう認識。資金繰りの面とか、他銀行にお願いするのが難しい感じではあるので、健全に経営をされて、それに則って新たな地域密着型としての立ち位置を築いて欲しいというのが本音」と語る。
■再生に向けて
批判と願いを受け止めて進む地域経済の「最後の砦」。
組織再生に向けたかじ取り役を担う金成理事長は、自身の反省も踏まえて「正しい金融機関の形」をつくりたいと話す。
「私も職員時代、本来きちっとものを言うべき事柄というものがあったけど、それを言わなかったということは実際あった。異常なまでの上意下達の企業文化と、それに基づくパワーハラスメント等の常態化を招いていた。これから職員の意見を吸い上げて、それを解決していく。それも皆で意見を出し合って解決していくという形を取っていけば、その風通しの良い組織という形を作っていけるのかなと思っている。この1年は、当組員とっては、新しく生まれ変わる機会になったと言いますか、本来あるべき金融機関の姿になるべきタイミングではあったのかなと」と金成理事長はいう。
地域からの信用と信頼を取り戻せるか...これからが正に正念場となる。















