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防災大百科

対岸の大火を見過ごさず、我が家も守る

災害から住民の命を守るために、市町村では様々な防災対策を進めている。市町村の代表者である市町村長や住民代表から、それぞれの地域の防災「わがまち防災自慢」について話を伺う。今回、東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんが訪ねたのは、福島県会津若松市。

◇【動画で見る】冬の大地震で1624人死亡の被害想定も...雪・寒さを踏まえた備え
◇【動画で見る】「住民参加でなければ」地区を歩いて作った防災マップ

寒冷地ならではの備え

防災マイスターの松尾一郎さんが会津若松市の室井照平市長に案内してもらったのは、指定避難所となっている会津若松市立行仁小学校。建てられて3年目の真新しい校舎には、冬場の冷え込みが厳しく、積雪が多い会津若松市ならではの災害への備えが整えられていた。備蓄倉庫には、暖をとるための毛布が100枚、冷たい床から守るダンボールベッド60個など「寒さを想定した」備蓄品が。

 

冬の避難 低体温症のリスク

20241月に発生した能登半島地震で、被災者が直面したのが避難先での「低体温症」のリスク。会津若松市では、大規模な災害が起こった時に避難所での備蓄が不足する場合を想定し、民間企業と物資の供給に関する協定も結んでいる。

 

冬季の災害 最悪の想定が

福島県が202211月に約25年ぶりに見直した「大規模地震の被害想定」では、会津地方で最大の断層「会津盆地東縁断層帯」で最大震度7の地震が起こった場合に、最も被害が大きいのは冬。一番降る時で、一晩で1メートルを超すほどの雪が降る会津若松市。「元々の積雪に加え、屋根の雪が落ちて通行が困難になる箇所が出る」「近隣の人が協力して生き埋めになった人の救助活動を行おうとするが雪の影響で困難なケースもある」といい、死者は1624人、35970棟が全壊または焼失という過酷なシナリオが想定された。

 

雪を踏まえた防災

会津若松市では、市内を除雪する約300台の除雪車にGPSを搭載。ウェブサイトで「除雪車がどこにいるのか」をリアルタイムで確認でき、市民の生活を助けるだけでなく、応援車両の適切な手配など、行政の効率化にもつながっている。室井市長は「市民生活が止まる大雪は、災害に近い。高齢者を助けるという意味では、地域で助け合いをしなくてはいけない。そういう中で、雪と共存していくことが大事」と話す。

 

地域の特色に応じた災害体制

「寒さ」や「雪」と共存し、それを踏まえた防災体制を構築する。寒冷地ならではの課題だ。室井市長は「様々な災害あるが、まず自助。自分で的確に瞬時にどうすべきかという判断を災害に応じて判断していただくことと、また共助。地域の皆さんで支え合い助け合う。そして公助。最後の守りは、行政も含めて総合力だと思う。備えが大事、備蓄や除雪の体制をしっかりしていく」と話した。

 

自分事として備えを強化

防災マイスターの松尾一郎さんは「能登半島地震の教訓のひとつに、地震が起こる前に、どのような防災対策が出来たかだと思う。地震はどこでも起こる、あるいは過去に起こったことがあると考え、自分の立場に置き換えて、備えは十分か確認することが重要」と話す。

加えて「会津も1611年に内陸地震が発生している。これは会津盆地の西の縁で起こった地震。実は、盆地の東側にも断層があって、そこは3000年近く発生していない。あすにでも起こり得ると考えて、日ごろからの備えを強化していくことが大切」と話した。

 

備えは民間でも進む

会津若松市の南部に位置する大戸町。土砂崩れや川の氾濫による災害の危険性が高いとして、多くの場所が「土砂災害警戒区域」に指定されている。

「今までの台風では、1メートル下ぐらいまでしか水が来なかったの。それが、令和元年の19号台風で、この堤防を超えてこの道路まで水が上がったと」と話すのは、大戸町の地区会長を務める芳賀修二さん。

令和元年の東日本台風では、自宅の近くを流れる阿賀川の水が堤防を越えて押し寄せたという。「ここまで水が出るのかと...今までは100年に一度の台風とか、それが毎年全国でありますので、100年に一度じゃなくて、ここも来ると」と語る。

 

地区防災をリードする公民館

激甚化する自然災害にどう向き合うべきか。住民がまず始めたのは、防災マップの作成だった。作成に関わった大戸町公民館の森澤由尉館長は「自分たちの足で危険箇所や、有益な施設を発見しながら進めていった」と話す。

「見通しが悪い」といった実際に現地を見たポイントや、過去の災害の経験を踏まえた危険箇所。マップ作りを主導したのが、「地域課題解決に寄りそう公民館」をキャッチフレーズに活動する「大戸公民館」だ。地区の防災をリードする活動が評価され「優良公民館」として国の表彰も受けた。

 

住民それぞれが防災に関わる

公民館の森澤館長は、隣町に住む鈴木防災士と協力し、大戸町の14地区すべてを住民と歩き、防災上の課題を洗いなおした。

防災士の鈴木里美さんは「大戸町は、水害でなくても地震で集落が孤立してくる可能性が高いということを、今回の能登地震で学んだ。そういったところも合わせて、備えを進めていけるような形にしたい」と話す。

見やすさが特徴の防災マップは大戸町の約600世帯すべてに配布。地区会長の芳賀さんも地区を歩き、水害の危険性を再確認。「はっきり言って、防災は、住民が参加しなければ成り立っていきません」と話す。

住民、防災士、公民館...それぞれが自分の役割で防災に関わることが「地域としての防災力の強化」につながる。

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