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「来たくなる町、戻りたくなる町」に 廃校が生み出す石川町の新たなコミュニティの形

閉校から10年。かつての笑い声が消えた校舎に、再び人々の温もりが戻ってきた。福島県石川町の「モトガッコ」は、廃校を再利用した文教福祉複合施設として2019年に誕生。そこで働く秋山結美さんは、この学校の最後の卒業生だった。「取り壊される」と思っていた思い出の校舎が、図書館やカフェ、子育て支援の場として生まれ変わり、今や町民の心の拠り所に。人口減少に直面する地方の町で、古い校舎が紡ぐ新しいコミュニティの形とは。
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廃校を利用したコミュニティ拠点
日差しが少し和らいだ、夏の日の午後。校庭に響く子どもたちの笑い声...ここは文教福祉複合施設「モトガッコ」。廃校となった元学校の校舎を再利用し、2019年に町の新たなコミュニティ拠点が誕生した。
地元出身の秋山結美さんは、石川町役場の職員で今はモトガッコの運営スタッフとして働いている。
モトガッコの中を、秋山さんに案内してもらった。
「この部屋は、会議のほかヨガなど大きなイベントでよく使う部屋。理科室の水道場が残っていて、他の所が変わっていても懐かしく想うことはある」
残った校舎 最後の卒業生が戻ってきた
実は秋山さん、10年前に閉校したこの学校の最後の卒業生だという。「だいぶ児童の数が少なくなってきていたので、しょうがないと思っていた。取り壊しだとばかり小学生当時の私は思っていたので、6年間過ごした思い出の校舎がなくなってしまうことに寂しさを感じた」と振り返る。
2年前に福島県外の短期大学を卒業後、石川町の職員としてふるさとに戻ってきた秋山さん。その配属先は、かつて6年間過ごした母校だった。「懐かしさと、校舎がなくならなかったうれしさと、そういうのを日々感じている」と語る。
多くの町民が集う「モトガッコ」
学校の面影を残すモトガッコの1階には、豊富な書籍をそろえた図書館に、週末限定でカフェも開かれるオープンスペース。奥には、町の児童クラブも常設されている。
理科室だった2階の教室では、かるた大会も開かれ、子どもから大人まで多くの町民が参加したという。
さらに、子育て中の保護者が集う「いしかわスキッズ」は、0歳~小2まで子どもの遊び場としてだけでなく、保護者同士の交流や息抜きの場として利用されている。
若い力が町を明るく
石川町の人口は1万3400人余り(2025年時点)。少子高齢化などの影響で、福島県内の多くの自治体と同様に人口減少という重い課題も抱えている。
そんな中、モトガッコの一室ではこの日、地元の高校生たちが集まりあるミーティングが開かれていた。
生徒たちは10月の「石川町合併70周年記念式典」で、町の未来に向けたメッセージを発表することになっている。
生徒たちからは「知らない石川町の魅力を知ることがたくさんあって、参加できて良かった」「聞いてもらう人達の印象に残って"ここ良いな"と思ってもらえるような発表にしたい」との声が聞かれた。
町民に愛着をもってもらえる場所に
モトガッコでの勤務が3年目を迎えた秋山さん。母校への想いとともに、地域の拠点として施設の魅力をさらに高めていくことが、町の未来にもつながると信じている。
「外から来たくなる町、戻って来たくなる町というのが、本当に理想的な姿だとは思う。教師でないのに母校で働いているというのは、本当に不思議な感じはしているけど、この場所に町民が愛着をもってもらえたら良いなと思っている」と語った。
「モトガッコ」の誕生から6年。かつての学び舎は、そこに集う人々をこれからも優しく見守り続ける。