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福島テレビ制作のドキュメンタリー映画「かげる針路」11月21日から公開

福島テレビが制作したドキュメンタリー映画「かげる針路」が2025年11月21日から福島市の映画館「フォーラム福島」で公開されます。この作品は今年5月に放送されたドキュメンタリー番組を完全リメイクしたもので、原発事故の教訓から再生可能エネルギーの推進に舵を切った福島県の"理想"と、現在広がる"現実"に迫った意欲作です。
「再エネ先駆けの地」を目指した福島と現実のギャップ
福島県は2011年の原発事故後、「再エネ先駆けの地」を目指して再生可能エネルギーの導入を積極的に推進してきました。特に太陽光発電は県内に278施設あり、発電容量は全国1位を誇ります。
しかし、急速に広がるメガソーラー(大規模太陽光発電所)には、景観悪化や災害発生への不安など、地域との軋轢も生じています。そうした懸念から県内でも抑制策が打ち出されるなど、規制強化に向けた動きが出てきました。
先達山メガソーラーが象徴する問題点
映画では、福島市に建設された「先達山メガソーラー」に焦点を当てています。2025年9月末から商業運転を開始したこの施設は、約9万6000枚の太陽光パネルを設置し、一般家庭約1万6000世帯分の年間消費電力に相当する電気を生み出します。
しかし、地域住民からは様々な問題点が指摘されています。福島市の松谷基和さんが立ち上げた「先達山を注視する会」は、以下の問題を訴えています。
- 着工前に提出された予測と大きく異なる景観悪化
- 最大40メートル以上に及ぶ大規模な盛土による土砂災害の危険性
- 太陽光パネルからの光の反射(光害)による交通事故発生への懸念
住民と事業者の対話は進まず、8月からは事業者側が対話の場に姿を見せなくなったといいます。福島大学の柴崎直明教授は「先達山のメガソーラーだけが切り土とか盛り土の高さ、それから土砂量ですね、桁外れに違うんですよね」と指摘しています。
なぜメガソーラーが次々と建設されるのか
劇場版では、メガソーラー建設の背景にある構造的な問題も取り上げています。建設関係者の証言によると、2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)により、再エネで生み出された電気は一定の価格で一定期間買い取ることが国から約束されています。売電収入の見通しが立ちやすいことから投資対象となり、転売が繰り返され、事業者が次々と変わるケースも珍しくないといいます。
また、「福島県特有の環境」も影響しているといいます。原発事故の教訓から再エネ先駆けの地を目指す福島県にとって青いパネルは"復興の象徴"という側面もありました。建設関係者は「おいしい場所ということで福島は注目された」と証言しています。
再エネに「逆風」、原発回帰の動きも
映画では、再生可能エネルギーへの「逆風」が強まる一方で、国が原発の再稼働や建て替えを推進する「原発回帰」に舵を切った状況も描かれています。事故を起こした東京電力の柏崎刈羽原発は再稼働に向けて大詰めを迎え、映画公開日の11月21日には新潟県知事が再稼働容認を表明するとみられています。
制作にあたった福島テレビの井上明デスクは「原発事故を経験した福島の歩みを伝えてきた福島のテレビ局だからこそ、伝えられることがある」と話し、エネルギー政策について深く考えるきっかけとなることを願っています。
ドキュメンタリー映画「かげる針路」は2025年11月21日から福島市の「フォーラム福島」で公開されます。

























