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故郷は原発被災地に 元・東京電力社員が双葉町で始めた飲食店 食事で人と人をつなぐ

東京電力・福島第一原発が立地する福島県双葉町にオープンした飲食店。「ふるさとで多くの人が交流できるように」というオーナーの願いが込められている。

オーナーは元東京電力社員

双葉町出身の中野文春さんと妻の春子さん。2025年8月、JR双葉駅の東側にある地域活動拠点「FUTAHOME」に期間限定のチャレンジショップとして飲食店をオープンした。毎週水曜日、ランチ限定の営業だ。
「震災前は会社員でした。東京電力という会社に勤めていました」という中野さん。高校卒業後、東京電力に入社し、福島第一原子力発電所周辺の放射線量を測定するなどの仕事をしていた。

2011年、未曽有の放射能災害を引き起こした原発事故。中野さんのふるさと・双葉町を含む福島県の沿岸部などは、広い範囲で避難を余儀なくされた。
「恐怖と混乱が入り混じった感じ。インフラで電力を供給するという使命を負っていましたので、やりがいやプライドがあったけど、それが打ち砕かれてしまったと」と中野さんは語る。

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故郷の復興 食でかかわる

中野さんは、震災と原発事故の翌年に東京電力を退職。避難生活を送る福島県いわき市で、飲食店をオープンした。
故郷に帰ることはできるのか...そう思い悩む日が続くなか、2022年に双葉町の一部、「特定復興再生拠点区域」で避難指示が解除された。
「帰還される方も何人かいらっしゃるという情報をいただいて、非常にうれしい気持ちになった。私も何かそこに関わりたい。今、私ができることは食。飲食で何とか力になることができればという思いで決意した」と中野さんはいう。

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ランチは働く人の活力に

週一回の営業日は朝早くから準備をし、双葉町に向かう。「双葉でまた仕事ができるうれしさはある。楽しく仕事しに行きたい」と中野さんは話す。
オープンと同時に続々と客が来店する。その多くは、仕事で双葉町に訪れている人だ。
客からは「仕事する上でランチを重要視している。おいしい店が沢山できると、私はうれしい」「双葉にいっぱい来てもらえるように、これからも頑張っていただきたい」との声が聞かれる。

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双葉町に集まる人をつなぐ

中野さんは「まだ復興半ばと言うか、第一歩を踏み出した感じなので、昔の双葉町を知っている人間としては、かなり寂しい気持ちはある。やはり双葉町で食事ができるということは、人と人を繋げる力になれるのではないかと」と話す。

震災前、約7100人の住民がいた双葉町。一部で避難指示が解除された後も、町で暮らす人は200人ほどに留まっている。
中野さんは期間限定のチャレンジショップが終了した後も、町内で飲食店を続けていきたいと考えている。
「インフラ含め、病院・学校がまだできていないし、まだまだ住みづらい、帰還しづらいのかと感じる。目標としては、双葉町で皆が楽しく食事ができる場所を作りたいという思いはある」と中野さんは語った。

ふるさとで多くの人が交流できるように...中野さんの変わらない思いだ。

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