2回目採取デブリ「前回よりも“核燃料成分”多い」<福島第一原発>

福島第一原子力発電所2号機から採取された燃料デブリについて、分析を行う日本原子力研究開発機構(JAEA)は8月28日、「2回目に採取されたデブリ」の分析結果を公表し、1回目の採取デブリと比べ核燃料成分の割合が多いとみられることを明らかにした。JAEAは「採取場所の違いかどうかは分からない」としつつ、2回目の採取は1回目よりも1mほど格納容器の中心に近いところで行っていることを踏まえ「炉心の真下に落ちてきたものは同じような組成になっているかもしれない」と前回との違いを示唆している。
福島第一原発では、事故後13年8か月が経過した2024年11月にようやく、2号機で初めてとなる燃料デブリの採取に成功。その後、2025年4月に2回目の採取を実施した。
JAEAによると、2回目に採取された燃料デブリは、複数のカケラを合わせた総重量が0.187gで、体積は約0.03立方センチメートル。いずれも1回目に採取された燃料デブリの3分の1程度と少なくなっていて、分析機関は前回の5機関から4機関に減少する。
JAEAがX線などを使って分析した結果によると、1回目と2回目の採取デブリに共通しているのは、核燃料の主成分であるウランが表面に広く分布していることや人力で砕くことができることなど。
一方、1回目で見られたような格納容器の比較的外側の部品などが由来とみられる成分由来の元素が非破壊分析では確認できず、炉心に近い核燃料由来の成分が中心となっている可能性があるとしている。
もともと2回目の採取は、サンプルのバリエーションを増やすために「格納容器の中心に近いところ」を狙って実施された。結果的に1回目よりも1mほど中心部に近いところでの採取に成功したが、JAEAは「場所の違いが分析結果の違いに影響したかどうかまでは現段階ではっきり分からない」としている。今後、砕いたデブリを4つの研究機関それぞれが詳細に分析する計画。
燃料デブリの取り出しは“廃炉の最難関”とされている。
福島第一原発に残る燃料デブリは1号機に279t、2号機に237t、3号機に364tの計880tと推計されているが、2回の採取量を合わせても、残るデブリの10億分の1程度と、取り出し完了までの道は遠い。
2011年の事故で、2号機は水素爆発を起こしておらず1・3号機と比べて損傷が少ないとされることから先行的に試験的取り出しが行われているが、事故から14年が経過してまだ2回目。
1号機ではプールからの核燃料取出しのために建屋を覆うカバーの設置工事が進行中で、燃料デブリの取り出しについても内部調査が継続されている段階。
3号機での本格的な取出しの工程案をめぐっては、2025年7月に東京電力が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)に示し、一定の技術的な成立性が確認されている。
「気中での取出し」「一部の燃料デブリは充填剤で固めてそれごと取り出す」という工法で格納容器の“横”と“上”からそれぞれ燃料デブリにアクセスする計画。放射性物質の飛散防止などのために設備や建屋を増設する必要があり、東京電力は「準備に12~15年かかる」としている。大規模取出しの開始は2037年度以降とされ、これまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となった。
東京電力ホールディングスが公表した2025年度第一四半期(4~6月)の連結決算では、燃料デブリの本格的な取出しの準備に向けた費用として9,030億円を計上し、この期間としては過去最大の8,576億円の赤字に転落している。
廃炉にかかる費用は約8兆円と見込まれているが、廃炉作業の全体像はまだ見えていない。
福島第一原発の廃炉は、2号機の燃料デブリ採取の着手をもって最終段階の「第3期」へと入ったが、何をもって「廃炉完了」の判断とするか、明確なゴールは示されていない。
国と東京電力は、2051年までの廃炉完了を掲げている。
【2号機燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】
■2021年:当初の試験的取り出し着手予定
⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期
■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ
⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。
管理体制の見直しを行う。
■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手
■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ
■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断
⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。
カメラ交換を決断。
■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了
■2024年10月28日:試験的取り出し再開
■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功
■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功
■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認
■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了
■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認
■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送
■2024年12月26日:JAEA「採取デブリからウラン検出」公表し「典型的な燃料デブリ」と評価
■2024年12月:デブリの非破壊分析が完了・分析機関に分配するためデブリを砕く
■2025年1月8日:JAEA「5つの分析機関への分配決定」公表
■2025年1月10日:デブリの一部をJAEAからMHI原子力研究開発株式会社(NDC)に輸送
■2025年1月22日:デブリの一部をSPring-8とJAEA原子力科学研究所に輸送完了
■2025年1月31日:デブリの一部をJAEAから日本核燃料開発株式会社(NFD)に輸送。予定されていたすべての研究施設への輸送が終了。
■2025年3月25日:2回目の採取に向け前回ミスがあった「棒の順番ミス」の訓練開始
■2025年4月14日:東京電力「準備が整った」として4月15日に2回目採取に着手することを公表
■2025年4月15日:ロボットの先端が格納容器につながる扉を通過し「2回目の採取着手」
■2025年4月17日:燃料デブリの2回目の把持・吊り上げに成功
■2025年4月19日:2回目の試験的取り出しで燃料デブリを格納容器外・配管の中にまで引き出す
■2025年4月20日:2回目の試験的取り出しでつかんだ燃料デブリの“引き出し”作業完了
■2025年4月21日:つかんだ燃料デブリが搬出基準(1時間あたり24ミリシーベルト以下)を下回っていることを確認
■2025年4月23日:事故後2回目の試験的取り出し作業完了
■2025年4月25日:燃料デブリ・事故後2回目の「原発構外」搬出完了