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処理水・溶接型タンク群初の解体完了 デブリ関連施設建設予定<福島第一原発>

福島第一原子力発電所で、処理水放出によりカラになったタンクの解体作業が一部エリアで完了した。東京電力は2月から溶接型タンクの解体作業に着手していて、溶接型タンクがまとまった場所としては初めて「12基分のエリア」の解体が9月3日に完了。このエリアは3号機燃料デブリ取出し関連施設の建設場所として計画されている。

福島第一原発での処理水の海洋放出は2023年8月に開始され、約2年が経過した8月25日には通算14回目の放出が完了。これまでに約11万t(タンク約110基分)の処理水が放出された。
処理水の放出は、敷地を圧迫する1000基あまりのタンクを減らし、廃炉のためのスペースを開けることが大きな目的のひとつ。1号機から3号機の原子炉の中に残される"燃料デブリ"に地下水や雨水などが触れることで発生する"汚染水"から、大部分の放射性物質を取り除き、海水で薄めたうえで海に放出する。
2025年8月21日の時点で、処理水等の貯蔵量は放出開始前から約5%減少している。貯蔵されている水の中には、放出の基準を満たせていない"処理途上水"も含まれている。

2025月2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まっている。今回解体が完了した「12基のエリア」は2025年度中の解体完了を目指していたが、作業が順調に進んだとして9月3日に解体完了。東京電力によると、作業中に大きなトラブルや周辺環境への影響はなかったという。
東京電力は引き続き、廃炉の進捗に伴って必要となる施設の建設計画を立てながら残るタンクの解体を実施していきたいとしている。


処理水の放出をめぐっては、2025年度は残り4回が計画されている。これまでに海洋モニタリングで異常などが確認されていないことなどから、放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度を2024年度よりも高くする方針。東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。

周辺の海域への影響は確認されていないが、通算13回目の放出では、竜巻の恐れや津波注意報・警報への対応により当初の計画よりも2日ほど遅れての放出完了となった。
処理水の海洋放出は、放出前の水をためる水槽と海水面の高低差を利用して海に流れるようになっているため、海面が高くなって水が逆流してしまう恐れがある場合や、設備の安全性を確認すべき場合には放出をとめることが定められている。
震度5以上の地震や津波注意報、竜巻注意情報(発生確度2)、高潮警報などで放出を手動停止することが決まっていて、これまで2024年3月にも地震により手動停止したことがあるが、放出開始以降、予定よりも完了が遅れたのは初めてだった。

また、東京電力は2025年7月10日に、異常が確認された場合に放出を緊急停止するための「緊急遮断弁」を動かす通信ケーブルのうち、1つの表面に長さ3cmほどの「削れ」による損傷があったことを公表している。緊急遮断弁を動かすための系統は2つあるうえに、損傷があったケーブルもすぐに予備に切り替えたため問題はないとしているが、放出完了時期として掲げている2051年まで設備の劣化や損傷による不具合が起きないよう向き合っていくこととなる。


国と東京電力が掲げる福島第一原発の廃炉の完了は2051年。
東京電力は2025年7月、3号機の燃料デブリ大規模取出しについて「準備に12~15年かかる」としたうえで、本格的な取出しの開始を2037年度以降とする工程案を示した。これまで掲げられていた目標である「2030年代初頭の着手」の達成は極めて困難な状況となっているが、最終的な廃炉の達成や処理水の放出完了時期については計画を変更していない。