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「"2051年"の旗を下ろす必要はない」 廃炉完了に向け最高責任者が語る15年<福島第一原発>

福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策最高責任者を務める東京電力の小野明プレジデントは、震災と原発事故から15年となるのを前に福島テレビの取材に応じ、国と東京電力が掲げる「2051年の廃炉完了」について「今の時点で旗を下ろす必要はないと思っている」とした。

【15年を振り返り「緊急的な状況からは既に脱した」】

福島第一原発では1日あたり3600~5000人の作業員が廃炉作業にあたる。現在は敷地の約96%は防護服のいらない、一般服での作業が可能なエリアとなっていて、事故後に進められた樹木の伐採やがれきの撤去、地面の舗装といった放射性物質の舞い上がりを防ぐための対策の効果も大きいという。

小野プレジデントは「事故後の本当に緊急的な状況からはもうすでに脱し、現在は現場も本当に落ち着いてきていると思う。そういう意味で、先を見据えた廃炉作業が計画的に進められるような状況になってきていると思う」とした。

この15年の作業の進捗をめぐっては、地下水が燃料デブリなどに触れて発生する"汚染水"について、2025年度の発生量は1日約60t見込みとなった。これが3年前倒しで低減計画を達成できる見通しとなったことや、3・4・6号機の使用済み燃料プールからの使用済み核燃料の取り出しが終わったことを挙げて「ある意味一定の、着実に成果をあげられた項目だ」とした。
汚染水から大部分の放射性物質を取り除いた"処理水"の海洋放出も2025年3月6日から通算18回目の放出を開始する計画となっている。これらについて「一定の見通しが得られてきている」としたうえで、「今後、福島第一の廃炉は、燃料デブリの取り出しに注力するステージに変わってきたのだと改めて実感している」とした。

【燃料デブリ採取「量を増やしていくということは十分可能」】

東日本大震災と原発事故から15年、事故当時に思い描いていた工程との違いについて小野プレジデントは「なかなか予定通りかというのは評価が難しい」としながらも、汚染水・処理水対策や使用済み燃料プールからの核燃料の取り出しについては「着実に実績を積めている」とした。

"廃炉の本丸"と言われる燃料デブリの取り出しをめぐっては、2号機でこれまで2回の「試験的取出し」に成功。ただし採取量は2回合わせて0.9gに留まる。3号機では建屋の"横"や"上"から燃料デブリにアクセスし大規模取出しを行う計画だが、放射性物質の飛散防止などのために設備や建屋を増設する必要があり「準備に12~15年かかる」としている。

小野プレジデントは「燃料デブリの取出しに関しても色々な情報が得られてきている。試験的とはいえ2号機から燃料デブリを実際に取り出せたというのは、ものすごく大きな一歩だと思っている」とし、今後については「どんなに大きな河も一滴の水から始まる。燃料デブリの状態が分かってくると、それにどうやってアプローチしたらいいか、どういう形で大量に取るのか、取り方も含めていろんな検討の精度がどんどん上がっていく。取り出す燃料デブリの量を増やしていくということは十分可能だと思っている」とした。

【遅れていること、進んでいること】

この1年間に着目し、小野プレジデントは「遅れていること」「順調に進んでいること」の代表的なものとして2点ずつを挙げた。「遅れていること」は1号機の大型カバーの設置と3号機の内部調査の実施、「順調に進んでいること」は2号機の使用済み燃料プールからの核燃料の取出し準備と、汚染水の量の低減を挙げている。

1号機では事故で建屋上部が大きく破損し、使用済み燃料プールからの核燃料取出しの際に放射性物質が飛散する恐れがあることから建屋を覆う大型カバーの設置工事が進められていたが、設置工事中に部品を持ち上げていたクレーンが停止するトラブルが発生。「2025年夏頃完成」と見込んでいた作業を「2025年度内」に見直したうえで作業が進められ、2026年1月に取り付けが完了した。
小野プレジデントは「2027年度から28年度にプールからの核燃料取出し開始、という目標については今のところ達成が可能」としている。

また、燃料デブリの大規模取出しが計画される3号機では、格納容器内部の状況把握のために約12cm四方の超小型"マイクロドローン"による調査を計画していたが、ドローンを送り込む装置がテスト中に停止するトラブルがあり「2025年12月にも」としていた調査開始時期を見送っていた。

一方で"汚染水"については、原子炉建屋の周りを雨水などがしみ込まないようにアスファルト等で覆う工事の効果などにより、3年前倒しで低減計画を達成できる見通しとなったほか、2号機の使用済み燃料プールからの燃料取出しについては、2025年5月に取り出しに使用する装置の設置を完了した。小野プレジデントは「2026年度の第一四半期にも取出しを開始したい」とし「国の中長期ロードマップにのっとったやり方がしっかりとれている」とした。

【2051年の廃炉完了「旗を下ろす必要は現時点でない」】

国と東京電力は福島第一原発の廃炉について「2051年の完了」を掲げている。現在は何合目に到達したかという問いに小野プレジデントは「なかなか定量的に難しいが、この15年で色々なことが達成できている。そういう意味では着実に歩みが進んできていると思っている」とした。

この「2051年」をめぐっては、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志 廃炉総括監(元原子力規制委員会委員長)が2025年5月の報道記者との懇談会で、「個人的な見解」としたうえで「2051年にデブリの取り出しが完了しているはずがない」「中長期ロードマップの見直しはあり得るどころか必須」と話すなど、専門家のなかでも様々な意見があがっている。

小野プレジデントは改めてこの「2051年」について、2025年の7月に本格的な取り出しの開始までに準備として"横からの取出し"の場合は12年、"上から"だと15年程度は準備にかだろうと評価している、としたうえで、「この結果を踏まえても、現時点で、国の中長期ロードマップで示された30年~40年での廃止措置の終了という目標は、多分下ろす必要はないのではないかと考えている」とした。
"2051年の廃炉完了を信じて良いのか"という問いに対しては、「我々はその旗を今の時点では下ろす必要はないと思っている」と強調した。