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災害を"伝える" 福島の女性たちが紡ぐ生きた防災 人形劇やイベントで地域に住むすべての人へ教訓伝承
東日本大震災から15年、福島県民の7割以上が「風化」を感じる中、いわき市の「内郷女性消防クラブ」は人形劇や数え歌で子どもたちに防災を伝え続けている。幾多の災害を乗り越えてきた彼女たちが目指すのは、家族の誰もがリーダーシップを発揮できる「家庭でできる防災」の実現だ。
被災地が感じる「風化」
2025年は、東日本大震災と原発事故から15年目。福島県は、復興への道を進む中でも東日本台風、2度の福島県沖地震、毎年のように発生する水害など多くの災害を経験した。
福島県民を対象に2024年12月に実施した世論調査では、震災と原発事故について7割以上が記憶や教訓の風化を「大いに感じる」または「感じる」と回答するなど、経験を次に伝えるということがいかに難しいかということが浮き彫りになっている。
災害を知らない世代に伝える
約40年前に発足した福島県いわき市の「内郷女性消防クラブ」は「地区に住むすべての人に届く防災」を目指し、防災イベントや講演会、外国人に対する防災指導などを実施。子どもたちにも届くよう、人形劇や数え歌を通して「災害に備えることの大切さ」を伝えている。
この日は、地区の祭りに集まった子どもたちに火事の怖さを人形劇で伝えた。子どもたちは「地震とかおきた時は、自分たちの食事とかを用意できるようにしたい」「ハザードマップを見たり、非常食とか備えたりしています」と話し、防災への意識を高めていた。
家庭でできる防災を
2023年9月に福島県いわき市を襲った線状降水帯。雨雲レーダーでは1時間100ミリを超える領域も観測され、市内では10の河川が氾濫、住宅だけでも被害が1800棟に及ぶなど甚大な被害となった。
内郷地区も甚大な被害を受け、避難をした住民の半数が自宅に水が迫るなど切迫した状況で避難を開始していたことがわかった。
内郷女性消防クラブの遠藤和子隊長が「注意していてもダメだった災害もありますが、できるところは家庭でできるので、家庭でできる防災を発信していきたい」というように、家族の誰しもがいざというときにリーダーシップをとれるようになってほしいとしている。
女性消防クラブの歴史は、全国的に長く1950年頃から始まったものだという。東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・防災マイスターの松尾一郎さんは「いまは高齢者宅の防火点検など地域との橋渡しとしての役割は大きい。地域の奥様や女性目線が、子ども向けの防災や家庭の防災について推進するためには重要」と話す。誰しもが「防災」の意識を持つことが重要になる。