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日本酒「南郷」に魅せられて...元官僚が歩む蔵元としての道《もっと!ぐっと!矢祭町》
矢祭の酒を愛し、酒造りの伝統を受け継いだ男性は「運命的なものを感じた」と語る。異色の経歴を持つ蔵元は、導かれるように酒造りをはじめた。
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伝統的手法で作り出される日本酒
東北最南端の地、福島県矢祭町。ここに、200年近い歴史を誇る町で唯一の酒蔵がある。
ここは1833年の創業以来、伝統的な手法で矢祭の酒を守ってきた。北海道産の酒米、地下からくみ上げる地元・久慈川の水を使い、この日は純米吟醸の醸造に向けた、仕込みの準備をしていた。
代表の矢澤真裕さん(53)は「きょうのは酛立て(もとだて)という酒母(しゅぼ)をつくる工程。小さいタンクに酵母を育てて、その酵母を増殖させていく一歩目」と説明する。

「南郷」との運命の出会い
矢澤さんは、東京都出身で国土交通省の元官僚という異色の経歴の持ち主。
酒好きが高じて醸造機械メーカーに転職し、行きつけの店で出会った一本の日本酒が人生を大きく変えた。
「私が東京で出会ったのが、この『南郷純米酒』です。先代は"花火のようだ"と表現する」
江戸時代から伝わる矢祭の名酒『南郷(なんごう)』。料理の味を引き立てるキレの良さを持ち合わせた"究極の食中酒"だと矢澤さんは評価する。
「またもう一発、花火を見たくなるように、もう一杯飲みたくなる。まさにその通りだなと思います」
この『南郷』を通じて出会ったのが、当時の蔵元・藤井健一郎さん。日本酒への愛を語り合ううちに、藤井さんから「酒蔵を継いでほしい」と声がかかり矢澤酒造が誕生した。
矢澤さんは「なにか運命的なものを感じました。一本の赤い糸が、もともと通っていたのではないかと思う」と語る。

伝統に新風を吹き込む
酒蔵を継いで2026年で10年目。伝統を受け継ぎながら新たな味わいを生み出す挑戦を続け、手がけた日本酒は全国の鑑評会でも数々の賞を受賞するようになった。
日本酒の魅力をもっと広めたいと始めた隣のカフェでは、ゆったりとした空間で酒とつまみを楽しめる。
「蔵人の方々は、東京で生まれ育った人は、1週間もたないと思っていたらしい。日本酒つくれるとワクワクして来ていますので、辛いと思ったことはないです。人生をかけて、やる価値のある、やりがいのある大プロジェクトだと思います。可能性はまだまだありますし、日本を代表する『国酒』の一つですので、世界にもアピールしていきたい」
どんなお酒ができるのかチャレンジして見守るのが楽しいという矢澤さん。自分の選択に悔いはないと言い切る。
作り手として。何より矢祭の酒を愛する者として。理想の味わいを追い求める矢澤さんの酒造りは続く。



























