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未知の味を追い求めて 天然食材ハンター・小豆畑浩稔 平日は会社員、週末はスッポンやウナギを狙って

人知れず育まれる自然の恵み。ある男性はきょうも山野を分け入り、川へ飛び込み、私たちが知らない味を追い求めている。
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天然食材ハンター 小豆畑浩稔
人の手を介さない純粋な自然の恵み・天然食材。個体によって味にバラつきこそあるが、「さっぱりした脂」や「豊かな香り」など自然が育んだ味わいがある。しかし、供給が足りていないのが現状だ。
そんな天然食材を追い求める男がいる。小豆畑浩稔(あずはたひろとし)は、天然の食材ハンターだ。「会社員として勤めているけど、土日祝日は趣味の一環として山菜やキノコを採ることをしている」と語る。
幼少の頃から自然が大好きだった小豆畑。どんな食材がどの時期にどこで獲れるのか、自然に身を投じた蓄積が数々の天然食材を集める礎となっている。
自ら採取 自ら店舗へ
6月のある日、川を訪れた小豆畑。狙いは天然のスッポンだ。「やはり腐った肉とかを好む。死臭がするようなやつ。血生臭いやつとかすごくいい」と話し、罠にかかるのをじっと待つ。我慢比べだ。
コツは「スッポンの気持ちになること」と語る。どういうところを好むかを考えて仕掛ける。
罠を仕掛けて待つこと3時間、3キロを超える個体もあり上々の成果だ。
小豆畑は獲った食材を、自ら飲食店に持ち込むことにこだわる。個体によって差がある天然食材。「これは脂の乗りが悪いとか、ちょっと筋肉質だとか。こういう流れの中にいるやつは筋肉質だから筋肉質のモノを好むお客さんにはこういうところで獲ればいいとすごく勉強になる」と話す小豆畑。調理の工程を観察し、個体ごとの個性を読み取っていく。
繰り返すこと それが次の成果に
秋が近づいてきた9月、この日はキノコ狩りへ。野生のキノコは獲れる時間が極端に短い。野生キノコ数日で腐敗が始まり2~3日しかベストな状態がないそのため、毎週山に入りキノコが生える木の場所まで記憶する。「覚えるしかない。どれだけ前回のデータが自分の中に残っているかが次の成果に繋がる」と話す。これが小豆畑だけの地図となる。
今年から小豆畑が挑戦するのが天然ウナギだ。市場に出回るウナギのうち天然モノはわずか0.3%。小豆畑でも何度も何度も竿差し込んでいくしかない。
天然食材の魅力
近道がない天然食材との出会い。時間と労力こそかかるが、気づけたこともある。「昔の川はヘドロみたいなのが多かった。川歩いていても、下水がそのまま流されていたので。今は、鮎がそこら中にいる。鮎が食う苔が繁殖している。ここ10年くらいできれいになったのだと感じる」という。
川がきれいになることは、そこに生きる命と人との距離が縮まった1つの証。その変化の先にあるのが「きょう出会えるかどうか」だけの世界だ。
「一期一会ですかね、やはり同じのってないので。魚も同じ場所にいますけど、違う個体なので。共存しあって競争しあっている天然食材と出会うのがすごく好き」と語る。
小豆畑はきょうも自然と対話する。水に触れ風を感じ、土を踏みしめ命に出会う。この自然のどこかに、誰も知らない味が静かに息づいている。まだ私たちが気づいていないだけで。