テレビ番組テレポートプラス
巡回中の"違和感"が救った命 3000軒を見守る「街の見張り番」伊達警察署長岡駐在所の佐藤昌宏警部補

地域に密着し、犯罪被害の防止などを呼びかける街の「おまわりさん」。住民のSOSをいち早く察知するために、警察が協力を呼び掛ける「巡回連絡」。その実態を取材した。
街の見張り番
福島県伊達市、伊達警察署長岡駐在所の佐藤昌宏警部補は、この地域の『巡回連絡』を担当。1軒1軒住宅を訪問しながら、近況を確認し"犯罪被害防止"を呼びかけている。
「こちらの携帯番号も変わりないですかね?」
「全国的に振り込め詐欺の被害がすごく多いのですよ」
「巡回連絡」で行うのは主に緊急連絡先や家族構成の確認や、最近の犯罪の傾向や対策などの情報共有。そして、地域での身近な話題を聞くことも仕事の一つだ。
佐藤さんは現在、地域の住宅約3000軒を担当。町の人にとっても頼れる身近な話相手だ。住民は「地域のことを気にしてくれている感じはするので安心感はある。まあ『街の見張り番』って感じだね」と話す。
犯罪を未然に防ぐ
犯罪抑止の『巡回連絡』。その効果はしっかりと現れていた。
ある住民は「契約しそうになった時があって。でもちょっとおかしいなって、そんなの電話でよこすはずないなって思って問いただしたら、向こうの方から勝手に切りました。そういうのも、日頃から警察の人からお話聞いているから」と話す。
佐藤さんは「話題も多くないと、なかなか話にもならないので、いろんな分野に興味を持ちながら巡回している」と話し、何気ない会話から街の異変を察知する努力を重ねている
玄関にSOSと書かれた新聞紙
佐藤さんは、自宅を兼ねた駐在所に異動し5年目の今年、巡回連絡を通して息をのむ場面に遭遇したという。
「普段その家には午前中、車が停まってないような状況だったが、車両が停まっているのが目に留まった」...いつも巡回をしているからこそ気付いた、小さな違和感。
家を訪ねると玄関の前に貼られていたのはSOSと書かれた新聞紙だった。
「これはただならぬことだなと思って、玄関の鍵を確認したら開いた」という佐藤さん。異変を感じ、家の中に声をかけ入ったところ、この家で1人暮らしをする68歳の女性がほとんど意識のない状態で倒れているのを発見した。
「命の恩人です」
佐藤さんはすぐに119番通報し、救急搬送された女性は一命を取り留めた。
原因は重度の熱中症。病院からは「少しでも発見が遅れていたら命が危なかった」と言われたという。
救命された女性は「命の恩人です。私1人暮らしだから、結局心配してくれる方いなくて」と話す。
前日から意識が朦朧としていたという女性。目の前にあった新聞紙になんとか書いたSOS。玄関に貼って間もなく倒れてしまったという。
女性は「近くに携帯があったけど充電なかった。家電もあるけど、かけられるような状態じゃなくて」「人間って1人で生きていけない、自分1人じゃ絶対。誰かのお世話になって生きてくしかないのだなと思いました」と語る。
巡回連絡冥利に尽きる
この件で、福島県警察本部から表彰を受けた佐藤さん。普段の巡回連絡が、住民の命を救った。「家族の連絡先を事前に教えていただいていたので、スムーズに連絡することができた。命を救えたということは、警察官の巡回連絡冥利に尽きるのかなと思っています」と話した。
駐在所勤務5年目の秋、着実に。一歩ずつ。きょうも"街の見張り番"佐藤さんは、あらゆる犯罪から地域をそして住民の命を守っている。