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採取デブリの500倍超...高線量"土のう"回収は障害物撤去に1か月程度<福島第一原発>

福島第一原子力発電所に大量に残る高線量の"劣化土のう"回収にあたり、落下した照明などの障害物が作業を妨げている問題で、東京電力はこれらの障害物の撤去に1か月程度かかる、と公表した。2つの建物に残る大量の土のう回収について"2026年度から2027年度の終了"と掲げているが、回収ロボットの通り道をあけるなど作業全体の進行には障害物の撤去が不可欠で「障害物の撤去作業の進捗や完了状況を見て工程を精査する」としている。


土のうが残るのは、地下水などが燃料デブリに触れて発生した"汚染水"を浄化して"処理水"にする過程での通り道になっている建物で、プロセス主建屋と高温焼却炉建屋の2つ。
事故当時から、高線量の「汚染水」を浄化するため、放射性物質を吸着するゼオライトの土のうと、油分などを吸着する活性炭の土のうが大量に投入された。
ゼオライト土のうの表面線量は1時間あたり最大で4400ミリシーベルトと高く、時間の経過によって劣化して破れるなどして、大部分が地下に流れ込み「汚染水」に浸かってしまっている。2024年11月に採取された燃料デブリの表面線量が1時間あたり8ミリシーベルトなので、単純計算で500倍以上の放射線量。
このゼオライト土のうだけで、2つの建屋に合わせて約1300袋・26tが残されていると推計される。


東京電力は土のうを回収するため第一段階の"集積作業"と次の段階の"容器封入作業"に分けて作業を進める計画で、2025年3月から第一段階を開始し、ロボットで破いた土のうの中身を吸引して集積場所に運ぶ作業を行っている。
一方、作業を進める中で、天井から落下した照明や、倒れたロッカーなどが現場に存在することが発覚。これらの障害物を移動させる必要があるとして、これまで1つ目の建物で"2025年7月に完了"するとしていた集積作業は、"夏から秋に完了"と、3~4か月程度の遅れになると明かしている。東京電力は8月21日の会見で「障害物の撤去に1か月程度かかる」としていて、"夏から秋に完了"としている集積作業にも影響を及ぼす可能性が高い。

"集積作業"は当初、2025年1月から2月の着手を計画していたが、現場が非常に高線量であることから、十分な安全対策をとる必要があるとして後ろ倒しされていた。またこの前段の土のうの"破砕"については、ロボットの設備の不具合により一時中断した経緯もある。


東京電力は2つの建物全体での"集積作業"の完了を2025年度中、回収作業全体について"2026年度から2027年度の終了"と掲げているが、現場は放射線量が高いうえに暗くて狭いため、作業が難航する可能性もある。東京電力は8月21日の時点で今後の工程を「障害物の撤去作業の進捗や完了状況を見て精査する」としている。