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経験は役に立たない!? 大雨に猛暑...記録更新を続ける気象 激甚化する災害に"過去以上"で備える

2025年の梅雨は「メリハリ型」と言われている。晴れれば猛暑、雨が降れば警報級といった形だが、これまでは梅雨の後半に「メリハリ型」が起きやすいと言われていた。しかし、地球温暖化の影響で梅雨入り早々に大雨になってきている。また回数を見てみても、確実に増加している。毎年、甚大な被害をもたらす雨の恐怖。過去の経験を超えての対応が求められている。
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訓練 垂直避難を考える
大雨などで、すぐそこに浸水の危険が迫った場合には「遠くに逃げる」だけでなく「高くに逃げる=垂直避難」も重要になる。
福島県にある、いわき市立錦小学校で行われた訓練に登場したのは、カギがかかっている校舎に緊急避難するための「蹴破り戸」だ。小学校の近くの住む50人が訓練に参加し、校舎内の避難経路を確認した。
市の職員は「逃げ遅れて近くに避難するところがなく、とりあえず高台に逃げるとなった時に、蹴破り戸を破って避難していただく」と説明する。
過去の教訓 検証結果から整備
福島県いわき市では、2023年9月に線状降水帯が発生。10の河川が氾濫し1人が犠牲となったうえ、住宅への被害は約2000棟に及んだ。
その災害検証の中で明らかになった事のひとつが「垂直避難場所が少ないこと」。この教訓をいかし、2025年4月から新たに市内27の小中学校を緊急時の垂直避難場所として定め「蹴破り戸」などを整えた。
訓練の参加者からは「自分で、近くにある高い場所を確保しておくというのは大切だと改めて思った」との声が聞かれた。
いわき市危機管理課の猪狩雄二郎課長は「自分の命を守る事が最大の避難支援にもなるという意識付けを行ってもらって、まずは自分の安全を確保してもらうことが大切」と話した。
洪水被害は河川沿いだけではない
求められる新たな防災対応。専門家も「変化する雨」の危険性を指摘する。
河川工学を専門とする東北大学の風間聡教授は「いままで目標があった堤防の高さやダムの規模というのが、雨が非常に激してくなっていて追い付いていない状況」と話す。
風間教授によると、2000年から2030年までの30年間の平均で1年間に洪水の被害を受ける人数の分布は、阿武隈川など大きな河川の近くだけでなく県内全域に危険が広がっているという。
「昔はどちらかというと台風が北上してきて、それに沿って阿武隈川があふれるといったことが多かった。線状降水帯のように、すごくシャープなところで雨が降るというのが昔はなかった。中小河川にも曝露人口がたくさん点在しているので、大きな川沿いを集中的に対策しなければならない。中小河川沿いも目配りしていかなければならない」と指摘する。
これまでの対応を超えて
また風間教授は「過去の経験は役に立たないと思っていただいていい。積極的に情報を取りに行って、周りのコミュニティの方と密に連絡を取り合いながら行動してもらえれば」と話す。厳しさを増す災害に対して進む人口減少...これまでの対応を超えた街づくり、防災体制づくりが求められる。
さらに東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・防災マイスターの松尾一郎さんは「地球温暖化の影響もあり、雨の量も暑さも毎年のように記録更新している。大雨警報の上位の情報として『特別警報』を2013年から気象庁は使い始めた。『線状降水帯』という表現を使い始めたのが2016年。さらに線状降水帯を示す『顕著な大雨に関する情報』は2021年からといったように、どんどん現象が激しくなって、それを表現する情報を新たに作ることになった」と補足する。
メリハリ梅雨は暑さにも注意
そして2025年の梅雨は「メリハリ型」なので、雨はもちろん暑さにも注意が必要となる。
消防庁の統計によると、6月16日~22日の1週間に熱中症で救急搬送された人は全国で8600人を超えた。
2025年6月からは、企業の熱中症対策も義務化されていて、決して油断できない他人事ではない災害となっている。
防災マイスターの松尾さんは「熱中症による救急搬送は毎年増えている。熱中症は、自然の変化で起こる身近にある災害。暑いときは、無理に外出しない、クーラーを使う、日頃の備えを見直すべき」と警鐘を鳴らす。
「温暖化というよりも地球沸騰化時代。我慢しない」と松尾さんはいう。これまで"常識"と思っていた防災を見直す時が来ている。