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黒潮の大蛇行終息で福島の海は 常磐ものの新顔「トラフグ」はとれなくなる? カレイに影響も

7年9カ月という過去最長の期間にわたって続いていた「黒潮の大蛇行」が2025年4月に終息したと、気象庁と海上保安庁が8月に発表した。この現象は福島の海にどのような変化をもたらしているのだろうか。スルメイカが豊漁となる一方で、近年福島の新名物となっていたトラフグはどうなるのか。海水温の変化が福島の海の生態系にもたらす影響と漁業の今後について見ていく。

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スルメ豊漁の理由

福島県沖で続くスルメイカの豊漁。2025年9月に獲れた量は231トンと、9月として過去最高を記録した。
福島県水産海洋研究センターによると、スルメイカが生息する水深200メートル付近は、2024年に比べてすでに6℃も水温が下がっているという。
これも暖かい海流・黒潮の大蛇行が終わったことでの変化。ほかの魚への影響はどうなのだろうか?

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福島の新名物はどうなる

福島県相馬市・松川浦で冬の味覚となったトラフグ。このトラフグは、暖かい海水を好む魚だ。福島県内のトラフグの水揚げ量は、黒潮の大蛇行もあり年々増加。2024年は過去最高の55.9トンに上った。2022年には、一定の基準をクリアしたトラフグを「福とら」と名づけ、ブランド化している。

黒潮の大蛇行が終わり、フグを扱う相馬市の割烹山王閣・佐藤光崇さんは「今はトラフグがとれているけど、2~3年先にはどうなるか全くわからないので不安」と話す。

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新たな発見

そもそも福島沖で獲れるトラフグは、どこから来ているのか?黒潮の大蛇行以前は、暖かい対馬暖流で北上する日本海のトラフグが津軽海峡を越え福島県沖まで南下すると考えられていた。

しかし、2025年に新たな発見があった。福島大学の和田敏裕教授は、震災前から福島の海を知り尽くす福島の海博士だ。和田教授は、位置情報がわかるタグを取り付けたトラフグを相馬沖で放流し、どこで生息しているのかを調査した。

その結果...「だいたい南に行っている。北は宮城くらいしか行っていないので、おそらく南からきているのが大多数ではないかと考えている。さらに、東京湾が産卵場になっていることもわかりました」と和田教授は説明する。

東京湾で生まれた個体は、エサを求め回遊する中で、水温が高くなった福島県沖まで北上している可能性があるという。

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表層だけ暖かい海

そこで気になるのが、黒潮の大蛇行終息による海水温の低下。主に、浅い水面付近を泳ぐトラフグは大丈夫なのか?

ポイントは『水深ごとの水温の違い』だ。実は、水面付近と深いところでは水温の違いが生じていた。水面付近は、大気の影響を受け温まりやすく、一方、親潮系統の冷たい海水は重いので下に沈む。なので、黒潮の大蛇行終息後、福島の海は表面付近と深いところで温度差が生じているという。

和田教授は「水深100メートルについては、30年の平均に近づいている。ただ興味深いのは、表面の方はまだ2℃以上高いっていう状況が続いているので、表面だけはあったかい状況が続いている」と解説する。

ズバリ、今後も福島沖でトラフグは獲れるのか和田教授に聞いてみると「ある程度、漁獲されるのではないかなと思っています」との回答が得られた。

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変化する漁獲魚種

2025年もトラフグの出だしは好調で、ふぐ延縄操業委員会の石橋正裕委員長は「これから白子がだんだん大きくなってくる時期。身もおいしくなってくるので、ぜひ食べてもらいたい」と語る。

また、先出の割烹「山王閣」では、フグ刺しが1人前1300円とお手ごろな価格で頂ける。福島県の海産物ブランド「常磐もの」に新たに加わったトラフグ。定着するまで、豊漁が続いてほしいものだ。

その常磐ものの中には、暖かい水温が苦手な魚もいる。それがカレイだ。和田教授が「松川浦は浅く、そういう所を網引っ張ると結構カレイの稚魚が沢山とれた。イシガレイとかマコガレイがあまり獲れなくなっている」というように、特に浅い水深で成長するカレイなどの魚は大気の暑さの影響をもろに受けているそうだ。

気候変動は、獲れる魚の種類にも影響を与える。水産資源を有効に活用し、漁師の皆さんを応援するためにも、まずは地物の魚の状況を知って食べていくことが大切だ。

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