テレビ番組テレポートプラス
「採れたて1時間以内」世界唯一のホップジン 若き蒸留家の新たな挑戦《もっと!ぐっと!川内村》

自然豊かな福島県川内村で、地元の植物を使った独創的なクラフトジンづくりに挑戦する若き起業家。新たに取り組む鮮度にこだわったホップジンから、震災後の村に新たな魅力を吹き込む挑戦まで、その歩みを追った。
福島の自然豊かな香り
2024年11月に開所した福島県川内村の蒸留所「natura distill(ナチュラ ディスティル)」。川内村に自生する「カヤの実」などを使い香りを付けたクラフトジンを年間6000リットル製造している。
代表の大島草太さんは「人の想いと、あとはいかに植物の香りを僕らなりに一番良い状態で詰め込んで楽しんでもらえるか。究極のこの土地で僕らならではのジンができていく」と語る。
大島さんは、福島大学時代にボランティアなどで川内村を訪れた際、豊かな自然と人々の温かさに強く惹かれ、村での起業を決めた。
新たな挑戦は「ホップ」
2025年5月にはシンガポールでの販売もスタートさせるなど、事業が軌道に乗り始めるなか、今回新たに挑戦したのが...福島県田村市で栽培されている生のホップを使用したジン。華やかな香りと苦み(にがみ)を引き立て仕上げた。
「採れたて1時間以内に造るのは、世界中ないと思う。他にはない魅力的なものができた」と大島さんは自信を見せる。
大島さんが自身の原点と話すのが、福島県田村市のクラフトビール醸造所「ホップジャパン」。2019年から3年間勤務し、酒づくりの楽しさとノウハウを学んだ。
今回使用したホップも、ここで栽培されたもの。社長の本間誠さんもジンを通じて福島の魅力を表現する大島さんの取り組みを見守っている。
「ただお酒を造るっていうのではなくて、ジンを通したいろんな人・地域・自然への思いとかをどんどん外に広げていってもらいたい」と本間さんはいう。
ジンを通して様々な魅力を発信
2025年9月14日、福島県郡山市で開かれた東北最大級の蒸留酒のイベントに出店した大島さんは手応えを感じていた。「これだけ良いものが沢山あるので、それを僕らが1個1個、自分達の目線で編集して、それを使って届けることで、そもそもの地域資源や自然、人も含めて面白いものがあると知ってもらえたら」と大島さんはいう。
大島さんの挑戦は酒づくり以外にも。2026年春には蒸留所の2階に新たにレストランバーをオープンさせる。川内村の野菜などを使い、ジンとのペアリングを楽しめる料理を提供する予定だ。
大島さんは「食事を楽しめて、近くでも泊まれてっていう。通り過ぎるだけじゃなくて、1泊2日でもここでしかできない体験を出したい」と語る。
関係人口を増やし村に新たな風を
原発事故により、一時全村避難を余儀なくされた川内村。現在村内で生活している人は震災前の約6割で、そのうち若い世代は2割ほどに留まる。(※村内で生活している人2011年3月11日時点3038人、2025年9月1日時点1842人)
少子高齢化が課題となるなか、大島さんはジンを中心に川内村に関わる人を増やしたいと考えている。「例えば自然が好きな人であったり、この蒸留所の香りが好きな人であったり、そういう面白い人たちが集まってきてくれて、そういう方が来るほどさらに面白いものづくりも出来て。関係人口を増やしながら、面白いものづくりとそこを楽しむ人の流れを作っていきたい」と大島さんは話した。
大好きな福島と川内村の香りを、日本中そして世界中へ。大島さんの探究は始まったばかりだ。