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防災大百科

台風19号
『復旧の遅れは被災者の心の迷いへ技術者不足の解消を』

台風19号は福島県に大きな被害をもたらした。
東京大学客員教授で防災行動や危機管理の専門家「防災マイスター」の松尾一郎さんが
須賀川市と南相馬市の台風被災地へ

【阿武隈川の堤防が決壊した須賀川市の浜尾地区】
住宅やリンゴ畑などが浸水する被害が出た。

担当者に案内され松尾さんが向かったのは、仮復旧を終えた堤防。
国が検証を行った結果、決壊の理由がみえてきた。

福島河川国道事務所 古賀博久さん
「阿武隈川の水の力というよりは、低内地側からの越水という、いわゆる『特殊な事象』での決壊だったのかなと」

その「特殊な事象」を近くの住民がカメラにおさめていた。
映像をみると阿武隈川の外側から川に向かって大量の水が流れているのが分かる。
通常とは逆の現象を引き起こしたのが上流で発生した氾濫。
2ヵ所から住宅地や農地に浸水し、周囲よりも低い場所に押し寄せた。
この水が最終的に堤防の裏側から川へと流れ込み、決壊に至ったと考えられている。

現場を確認して松尾さんが感じたのは河川全体の補強の必要性です。

【農業用ダムの緊急放流により被害が発生した南相馬市の高倉地区】
ダムに最も近かった小野榮さんの自宅は、一気に増水し氾濫した川に飲み込まれ全壊した。
その要因として松尾さんが注目したのは川幅の狭さ。

重要なのはダムの放流量に見合った河川の整備。
下流で暮らす住民の不安を解消するためにも川幅や深さの改善が欠かせないと指摘する。

防災マイスター 松尾一郎さん
「やはり雨の降り方が変わっている。相当な雨の量に対しても下流を守れるようなダムの運用を。
これからダムを設置する立場、あるいは河川を管理する立場の人たちは考えていかないといけないと思います」

今回の被害をうけて高倉地区の住民たちは「協議会」を設立し、南相馬市に補償などを求めている。

南相馬市高倉行政区 菅野秀一区長
「農業を守ることは、食生活を守る。最終的には命を守るダムなんですよ。
その放水によって田んぼがガラガラになり、あるいは家も流された」

【台風19号を踏まえ、国が検討に乗り出しのが「ダム」の機能強化】
農業用など水の供給に特化した「利水ダム」は下流に流れる水の量を抑えるなどの
洪水を防ぐ機能は備わっていない。
そこで国が2020年4月までに策定を目指すのが施設の改良策を盛り込んだガイドラインだ。
福島県とも協議しながら機能強化を後押しする計画で、
県内ではおよそ10基の農業用ダムが対象になる見込み。

【動き出した対策を防災マイスターはどう捉える?】
防災マイスター 松尾一郎さん
「南相馬市の高の倉ダムのような農業用であったり、工業・水道などの利水ダムは全国に898基もある。
雨の降り方が変わり、高の倉ダムのような緊急放流は、どこのダムでも行われる可能性がある。
被災した小野さんに話を聞くと "上流にダムがあるから守られていると思っていた" とおっしゃっていた。
利水ダムだから基本は守る設備ではない...ハード対策は時間がかかるだろうから
下流に住む住民たちへの意識改革などできることからやっていくことが大事」

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