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「被害を最小に」被災教訓をカタチに 児童がつくった防災マップと強い土を使った工事【福島発】

<震災から12年 福島県の被害まとめ>
福島県によると、東日本大震災による死者は4166人。このうち6割近い2335人が、長期化する避難生活などで命を落としてしまった関連死だという。
被害を受けた家屋は、全壊が1万5469棟・半壊が8万3323棟・一部破損は14万1057棟に及んだ。
また原発事故などにより、最大16万4865人に上った県内外の避難者は、減少傾向が続いているが、現在も2万7784人に上る。

東京大学客員教授・防災マイスターの松尾一郎さんは「東日本大震災前に、東北沿岸部で起きた大きな地震・津波災害は、1933年に発生した昭和三陸地震津波だった。おおよそ50~80年サイクルで起こると考えた時に、被災すると復旧・復興を繰り返すことになる。復興には時間がかかり、12年というのは通過点に過ぎない。さらに原子力災害の影響も受けもっと長引く。真の復興というのは時間がかかるだろう 国は被災地を忘れずに役割をしっかり果たしていくことが大事」と話す。

<東日本大震災以外にも大きな地震が>
そして、災害は22011年3月11日だけではない。
2021年2月・2022年3月には福島県沖で地震があり、福島県相馬市は立て続けに震度6強の揺れに襲われた。

<相次ぐ災害を教訓に>
相馬港は、2022年3月に福島県相馬市で震度6強を観測した地震で大きな被害を受けた。復旧作業が続けられていて、3号埠頭ではひび割れした地面を舗装する工事が進められている。(2023年2月時点)
地震被害の教訓を踏まえ、この岸壁の復旧に採用されたのが「軽量混合処理土」と呼ばれる技術。今回使われた土には気泡が入っているという。
この岸壁は、地震で動いた周辺の土に押し出され地盤が沈下したことから、これまでより軽くて強い土を使うことで、その押し出す力を軽減。地盤沈下が起きにくい構造などを目指していて、2023年6月までの工事完了を予定している。

国土交通省東北地方整備局・小名浜港湾事務所の日向幸紀副所長は「同じような地震があっても、大きく壊れにくいように。被災で使えなくなる期間を短くするよう工事を進めている」と話す。

<ソフト面でも教訓がカタチに>
いま相馬市では、ハード面だけでなくソフト面でも防災が"カタチ"になりつつある。
放課後児童クラブに通う3年生が参加する「みつばち防災探検隊」に贈られたのは「文部科学大臣賞」 制作した防災マップが約1200の作品の中から、上位9作品に選ばれた。防災マップでは、危険な場所が写真付きで示されていたり、点字ブロックが敷かれている所が一目で把握する事ができる。

地震などで壊れた「点字ブロック」を見つけ、目の不自由な人たちが安全に生活できる環境をつくりたいと制作をスタート。子どもたちは、自ら点字ブロックが敷かれている場所や、目の不自由な人から聞いた話などを盛り込みマップを完成させた。

防災マップを作った阿部桃夏さんは「自分は目が見えてて、点字ブロック壊れてるなと思ってたけど、目の見えない人は、ちょっとでも無かったら危ない。今度からは目の不自由な人を見つけたら、道を一緒に案内してあげたいです」と語った。

この放課後児童クラブは、定期的な避難訓練など防災の取り組みを行っていて、これからも続けていきたいとしている。

<被害を最小限に抑えるためのハード・ソフト対策>
相馬市で行われている災害の教訓を生かした取り組みについて、東京大学客員教授・防災マイスターの松尾一郎さんは「港は観光・物流の主要拠点。簡単に被災しない対策を今からでも進めるべき。目が不自由な方への危険箇所マップを地域の子どもたちがつくったことは、とても素晴らしい。優しい心を持った地域の担い手が増えていくという事ですから、こういう取り組みをいろいろな所でやってほしい」と話した。

「一度起きたら終わり」ではない自然災害。いつ起きるか分からないからこそ、被災の経験を教訓にして、伝え続ける・備え続けることが重要だ。